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カカ 「僕らミランに死角なし」
text by
宮崎隆司Takashi Miyazaki
posted2007/09/20 00:09
──この夏もまた、君のレアル・マドリーへの移籍が噂された。1年以上にもわたりスペインメディアは報道を続け、レアル会長のカルデロンに至ってはこう断言した。「ミランにカカを引き止める権利はない。カカの本心はマドリッドにある」、と。
「でも、真実は違う。僕は何一つ具体的な話をレアルから聞いていない。知っているのは、僕の父がレアル首脳と話をしたことがあるという事実だけなんだ。その上で今の僕に言えるのは、あのレアルが興味を持ってくれたことを、心から誇りに思うということだけ。レアルは、紛れもなく世界で最も権威あるクラブのひとつなのだからね」
──君はこれまでに何度も、レアルの獲得意志に感謝を表明してきた。だからこそファンは不安に思うんだ。昨夏のアンドリー・シェフチェンコがそうであったように、君もまたいつか、ミラノに冷たく背を向けてしまうのではないのか、とね。
「それは違うよ。僕はミランと2011年まで契約を結んでいる。そしてガッリアーニ(ミラン副会長)が公言した通り、2012年までの延長が近い内に成立する見込みなんだ。僕はロッソネロのユニフォームに忠誠を尽くしている。ミラン首脳陣が僕の売却を決めない限り、僕の方から移籍を申し出ることは絶対にない。確かにシェバはロンドンに移り住むことを望んだけど、僕の心にマドリッドはない。僕とシェバとは違うんだ」
──オフの期間、シルビオ・ベルルスコーニ(ミラン会長)とは直接話を?
「何度か会って話をしたよ。でもレアルに関することは一度も話題になっていない。話す必要のないことだからね」
──では、ロナウジーニョに関する話は?
「会長が何としてでも獲得したいと思っていたのは確かだよ。もちろん僕も、一緒にプレーできたら嬉しい。ただロニーはバルサとの間に契約が残っているし、今の彼にチームを出る理由はないはず。だから僕との会話の中で、会長が彼に触れることはなかったよ」
──君とロニーの間ではどうだい?
「僕もロニーも南米選手権に出場しなかったから、この夏の間は話をする機会がほとんどなかったんだ。本当は僕もロニーもセレソンの優勝に貢献したかったんだけど、この4年間休みなく走り続けてきた僕らには、昨シーズンを終えた後に、心と身体を一度リセットする必要があった。昨季の終盤は気力だけで走っていたようなものだったから……」
──疲れ切っていたという昨季、それでも君はCLで得点王(10ゴール)を獲得した。名実ともに欧州ナンバーワンプレーヤーとなり、この冬のバロンドール受賞が確実視されている。十分な休養を経て臨む新シーズン、君を止めるのは至難の業だ。そうだろ?
「それは僕の口からは何とも(苦笑)。マークはよりキツくなるだろうし、すべてのチームが徹底したミラン対策を講じてくるはずだからね……。もっとも、そうした厳しさを僕は歓迎している。難しい局面を切り抜けてこそ、僕は巧く、強くなれるから」
ミランがあって、僕がある。
──バロンドールについてはどう?
「それについても何とも言えない。あの賞について、今の僕は僅かさえも考えていないからね。見据えるべきは目の前の試合、それだけだよ。ただ、一つだけ言えるとすれば、受賞できたら、それはチームメイトのお蔭だということ。バロンドールにはチームタイトルが欠かせない。そして昨季CLを制したのは、僕じゃなくて、あくまでもミランというチームだった。セードルフが連続してみせたアシストとゴール。その好調を支えたアンブロジーニ。ピルロをフォローし続けたガットゥーゾ、その彼の背後を厚くサポートしたDFライン……。それに、シーズンを通して効果的な選手交代を実践した監督の力、その起用に応えた選手たち。みんなの力があって、昨季のCL制覇がある。もちろんそれは今季も同じさ。たとえ僕へのディフェンスが厳しくなったとしても、対策を講じるのは僕ひとりだけじゃないんだ」
(以下、Number687号へ)