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長谷部誠 もっと激しく、もっと熱く。
 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/12/04 21:47

長谷部誠 もっと激しく、もっと熱く。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 ドイツに渡るまで、長谷部誠は日本代表に定着していたわけではない。2006年2月のアメリカ遠征で初めて招集されたが、ジーコジャパンで出場したのは3試合のみ。オシムジャパンでは'06年11月のサウジアラビア戦以降、ケガもあって招集が見送られてしまう。状況が変わったのは、今年1月に移籍したヴォルフスブルクで活躍するようになってからだ。約1年半ぶりに代表復帰したのが5月のコートジボワール戦だった。ボランチの一角として先発出場を果たし、玉田圭司の決勝点をアシストして存在感を示した。それから彼は、岡田ジャパンでレギュラーの座を死守している。

 ヴォルフスブルクで会った長谷部の体はひと回りゴツくなっていた。聞けば、体重が3kg増えたという。

 長谷部にとって、ヴォルフスブルクの指揮官フェリックス・マガトとの出会いが飛躍のきっかけとなった。

 「もうサッカー漬けの毎日ですよ。サッカーのことばかり考えるにはいい環境ですね」

 バイエルン・ミュンヘンを2度、リーグ優勝に導いたマガトの練習は厳しいことで有名だ。練習メニューの質がハードなのはもちろんのこと、早朝、午前、午後の3部練習が行なわれるときもある。試合の前日でも、100%全力のプレーが求められる。試合で使う体力を温存するために軽めの内容だった日本とは正反対だ。気を抜けばケガをしてしまうような削り合いのプレーも、ここではお構いなし。考えそのものを変えなければならなかった。

 「最初のころは厳しいトレーニングに体が慣れていなかったので、練習だけで精いっぱいでした。疲れた体のまま、試合をやっている感じというか。それが今は慣れてきて、試合でも十分に動ける。自分にとって新たな発見でしたね」

 マガトの信頼を得て、今季の長谷部は多くの先発機会を得ている。主にダイヤモンド型中盤の右サイドでプレーすることが多いが、1ボランチやトップ下に回ることもある。今季はリーグ戦、ドイツ杯に加えてUEFA杯がある。10月25日のバイエルン・ミュンヘン戦から2週間で5試合をこなす(4試合に出場、1試合はベンチ入り)など試合数は多い。そこに日本代表の試合も入ってくるのだから、スケジュールは一層タイトになる。しかし、長谷部はこの状況が、まったく苦にならない。長距離移動も「飛行機でもどこでも寝ることができるんで……」と平然と答えてしまう。

 今やヨーロッパでプレーする選手のなかで、日本代表とクラブの両方でレギュラーを張っているのは長谷部と中村俊輔ぐらいだ。欧州組が集結したジーコジャパンにおいても、人数でいえばクラブでレギュラーを取っているほうが少なかった。

【次ページ】 ゴール前に出て行くことが、自分に求められている。

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