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<私とラン> 北尾トロ 「4度目の正直なるか? in 与論島」
text by
北尾トロToro Kitao
photograph byYoshihiro Sagawa
posted2011/04/28 06:00
チームトロ続行を確定させた“うかつ”な一言。
結果は残せなかったものの、いちおう目的は遂げたわけである。走ることを続けるつもりはまったくなかった。沿道の声援を除けばつらいことだらけで、マラソンなんか楽しくないよと思った。でも、無事にゴールした3人の晴れやかな顔をみたぼくは、うかつにも言ってしまったのだ。
「このままじゃ終われないな」
これでチームトロ続行が確定。スポーツ音痴のぼくでもハーフが走れたのなら自分もやりたいと女性メンバーも加わり、翌年の那覇マラソンでリベンジを期すことにした。ところが、今度は慎重になりすぎてハーフで足切りを喰らう。さらに、南がダメなら北があるさと北海道に遠征した3走目の千歳マラソンは、12km地点から左足の膝が痛み始め、15kmからは股関節もおかしくなってしまった。それでも、走ってるんだか酔っぱらって踊ってるんだかわからない不規則なフォームでもがいていたのだが、19kmあたりでのんびり歩いている人に抜かれて自分の遅さに気がつき、ハーフ直前でまたしても足切りの憂き目に遭う。最初の那覇で一緒に走ったとき初心者だった男は4時間を切ったというのに。
「なんなら、制限時間がないに等しいホノルルに行くか。つき合うぞ」
これはどういうことなのか。答えはいくらでも見つかる。マラソンに向いていない。フルを走り切る筋力がない。練習メニューをこなすだけの精神力もない。やめるなら、三度目の正直が果たせなかったいまだと思った。しかし、盛り上がっているメンバーたちは打ち上げの席でぼくに言う。
「ここまできたら、見届けさせてもらうよ」
「なんなら、制限時間がないに等しいホノルルに行くか。つき合うぞ」
優しそうでいて、関東の平坦コースなど誰も勧めないのは、マラソン参加が旅行を兼ねた遊びの一環だからである。次回はいつでも、どこへ行ってみたいかから始まるのだ。
こうして選ばれたのがヨロンマラソンである。南の島での小規模な大会というのがいいし、制限時間が7時間なのも完走しやすい。まあ、ぼくの立場からすると、ここでダメなら後がない感じではあるのだが……。
午前8時、レース開始直後から息が苦しくなる。いつものことだ。2kmで呼吸が落ち着くと、ペースを上げないように注意しながら後ろのほうを走ってゆく。急な上りには逆らわず歩くことにしたせいか、10kmを過ぎても膝に違和感はない。これなら第一目標である“無事に折り返す”ところまでは行けそうだ。