Number Do MoreBACK NUMBER
<私とラン> 北尾トロ 「4度目の正直なるか? in 与論島」
text by
北尾トロToro Kitao
photograph byYoshihiro Sagawa
posted2011/04/28 06:00
4度目のフルに挑んだ五十男は、仲間が待つゴールに辿りつけたのか?
Number Do第2弾「100人が語るRUN!」より、ランニングチーム
“チームトロ”を 率いるフリーライター、北尾トロさんのランスタイルを
特別公開します。
3連続リタイアで迎えた4度目のフルマラソン挑戦だった。ヨロンマラソン。今度こそ完走すると胸に誓いながら、飛行機と船を駆使した4泊5日の行程を組む。まるで旅行気分だが、ぼくのマラソン挑戦はいつもこの調子だ。羽田空港、那覇市街、翌朝の船乗り場、そして現地の宿と徐々にメンバーが増え、今回はチーム9名中6名での参加となった。よく集まったなと思う。みんなも口々に「与論は一度きてみたかった」なんて言っている。まるで、もう目的の半分は遂げたみたいに。
チームトロはサブ4ランナーから未完走者まで、年代も20代から50代まで入り乱れた男女混成チーム。揃いのTシャツを作ってはいるものの、チームらしい活動は飲み会以外めったにしない。特徴は、マラソンに興味を抱いた人間が、さしたるスポーツ経験もないまま、メンバーの一人が作った“3カ月で初マラソンをモノにするメソッド”に沿ってトレーニングを行ない、42.195kmに挑むことか。負けず嫌いが多いせいか、ぼくを除く全員がすでに完走を果たしており、チームリーダーとしては実に肩身が狭かったりするのだ。
そもそも、ぼくの場合、走り始めた動機からして不純である。大きな大会で優勝したランナーが「沿道の皆さんの応援のおかげです」と言うのを聞き、そんなわけはない、速いから勝ったのだと断言したら、経験者の友人に反論されたのだ。
どうせなら滅多に行けないところがいいと那覇マラソンに決定。
「声援に背中を押されるっていうのは本当なんだって。走ってみればわかる。やるか?」
「よし、やってやるよ!」
つまり、ぼくの目的は走り抜くことではなく、声援によって疲れ切っているはずのカラダと気持ちが奮い立つかどうかを確かめることにあったのだ。この話を編集者2名がおもしろがって自分も参加すると宣言し、せっかくだからチームトロという名称をつけようと言いだす。大会選びも、どうせなら滅多に行けないところがいいと那覇マラソンに決定。なにしろ冷やかし気分なので、友人に作ってもらった練習メニューをロクに消化しないまま本番に臨むことになった。
'08年12月。第24回那覇マラソンは暑かった。もう、スタート直後から息も絶え絶えである。上り坂は重い足を引きずって歩くていたらくだ。が、那覇は沿道の声援がすごい。子どもたちにハイタッチの構えをされれば応えざるを得ず、お年寄りから「ちばりよ~」と声をかけられれば恥ずかしくって歩いてばかりもいられない。女子高生に声援されようものなら元気なフリしてスピードも上がる。背中、押されまくりである。友人の言葉は嘘じゃなかったと納得しつつ前半をクリアしたのだが、ここで指先のマメによる痛みが限界に達し、あえなくリタイア。バスに乗せられ“強制送還”されてしまった。