「民宿のみんなと楽しい打ち上げを」と思ったら……。

　絶え間なく続くアップダウンにうんざりしながら折り返し点に達すると、風邪で急遽応援にまわったメンバーが「行けるよ！」とハッパをかけてくれた。前半のタイムは3時間。4時間残っていることより、那覇での足切りタイムを切っていることが自信になる。25km、まだ足が動く。もしかしたら完走できるかもしれない。走り出して初めて、自分がゴールすることが現実味を帯びてくる。これなら残りの上りを全部歩いてもなんとか間に合うかも……守りに入るのはやめろ！

　30km手前から右足の裏がズキズキしてきた。マメができたに違いない。すでに両足の指先は、下りにやられて血豆になっているのがわかる。つらい、つらすぎる。警戒していた膝も痛んできて、給水所で立ち止まる時間が長くなってしまう。ああ、今回もここまでか。

　とぼとぼ歩いていると海が見えた。那覇から5時間も船に乗ってきたんだなぁ。宿泊した民宿のみんなと楽しい打ち上げをしたいと思ったら足が動いた。走っても走っても届かなかったゴールが、徐々に近づいてくる。

　最後500mは別人のように走れた。そして感激のゴール！だが、とっくにゴールしたはずのメンバーに会えたのは5分後だった。

「あれー、ゴールシーンを見逃しちゃった」

　連中、ぼくが戻ってくるのは早くても7時間スレスレだと踏んで、宿でくつろいでいたらしい。でもいいのだ。6時間44分35秒。フルマラソン男子355人中331位。微妙すぎる結果だが、ぼくにとっては忘れ得ぬゴールである。

　さて、今度はみんなでどこに旅をしようか。

◇　　　　◇　　　　◇

◆北尾トロさんへのQ＆A
    フリーライター兼ノンフィクション誌「季刊レポ」編集長

Q1 走りはじめたきっかけは？
沿道の声援力を確かめるため。

Q2 どのくらいの頻度で走っていますか？
レース前3カ月は週2回。

Q3 走ることで変わったことは？
カラダに興味がわいてきた。

Q4 愛用のランニングシューズは
探してます（今回はNBのTS2を）。

Q5 走るときに聴く音楽は？
ロック、R&B。

Q6 今までのベストタイムは？
6時間44分35秒。

Q7 今後の目標は？
歩かず走り通すこと。