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ヴィクトワールピサがドバイWC制覇!
日本競馬、21頭目の挑戦で偉業達成。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byREUTERS/AFLO
posted2011/03/28 12:15
2010年は、皐月賞、有馬記念を制覇しているヴィクトワールピサ(フランス語で「勝利の山」の意)。有馬記念では、ラストで追い込んできたブエナビスタを抑えて勝利を飾っている
ヴィクトワールピサを熟知していたトランセンドの藤田。
最後方につけていたヴィクトワールピサが馬群の外からスルスルと前に進出し、1000mを通過するあたりで、先頭のトランセンドに並びかけた。
左回りと右回りの違いこそあれ、まるで昨年の有馬記念のリプレイを見ているかのようだった。
普通、道中であのように動くと、馬がそのまま行きたがって折り合いを欠くものなのだが、ヴィクトワールはそうしても掛からないし、末脚の伸びを失うこともない――ということを、デムーロは有馬記念での経験から理解していたのだ。
「この馬はワンペースなので、向正面でペースが遅くなったときに動いたほうがいいと思いました」
おそらく他馬の騎手は、デムーロのこの動きを「奇襲」ととらえて、少なからず動揺しただろう。しかし、ヴィクトワールの日本でのレースぶりを熟知しているトランセンドの藤田は、そのままハナを譲ることなく、勝負どころへ突入して行く。
ラスト300m。外のヴィクトワールピサか、内のトランセンドか!!
4コーナーではヴィクトワールと内のトランセンドを先頭とする馬群は7馬身ほどに圧縮され、ほとんどの馬がそれなりにいい手応えのまま直線に入った。
スローペースになったときによくあるパターンなのだが、どの馬にも余力があって最後は伸びるということは、この時点で少しでも前につけている馬が有利、ということだ。
ケープブランコ、トゥワイスオーヴァー、ジオポンティといった世界の強豪が追い込んでくるが、ヴィクトワールとトランセンドもさらに末脚を伸ばす。
ラスト300mあたりでヴィクトワールが抜け出すかに見えたが、すぐさまトランセンドが内からしぶとく差し返す。
外のヴィクトワールか、内のトランセンドか。
凄まじい叩き合いがつづく。
少し前を行くヴィクトワールにトランセンドが近づいてはまた離れる、ということを繰り返し、ヴィクトワールが先頭でゴールを駆け抜けた。
1/2馬身差の2着にトランセンド。
今年が第16回目となったドバイワールドカップに14回目、延べ21頭目の参戦にして、ついに悲願の初制覇。しかも、ワンツーフィニッシュのおまけ付きである。
「アンビリーバブル! ファンタスティック!」
今年32歳、短期免許を取得した日本で13年乗りながら腕を上げたデムーロは、何度もそう叫んだ。
「ジャパンカップもイタリアのダービーも勝ったけど、なかでもきょうの一戦がベストレースだね」