競馬PRESSBACK NUMBER
ヴィクトワールピサがドバイWC制覇!
日本競馬、21頭目の挑戦で偉業達成。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byREUTERS/AFLO
posted2011/03/28 12:15
2010年は、皐月賞、有馬記念を制覇しているヴィクトワールピサ(フランス語で「勝利の山」の意)。有馬記念では、ラストで追い込んできたブエナビスタを抑えて勝利を飾っている
「日本に明るいニュースを届けることができて……」
デムーロばかりでなく、静かな闘将として知られる角居師の目にも涙があった。
「主催者が、日本の馬が3頭もワールドカップに出られるようにしてくれたことに感謝しています。日本に明るいニュースを届けることができて、本当によかったです」
自分の管理馬に限らず、日本馬が勝てばそれでいいと、いつも話している彼らしい言葉である。レースは、スタンドではなく、ゴールに近い外ラチ沿いで見ていた。
「ゆっくりめのスタートを切ったのに、向正面で前を全部かわした鮮やかな騎乗にはハラハラしました(笑)。先頭に立つのが早かったので、直線では『残ってくれ』と祈っていました。勝てるかどうか、ゴールするまでわかりませんでした」
次走は、香港のクイーンエリザベス2世Cになりそうだ。
そして、秋には、昨年7着に敗れた凱旋門賞に再度チャレンジする。
日本馬のなかで最も前評判の高かったブエナビスタは、後方から伸び切れず8着に終わった。今回初めてブエナの実戦に騎乗したライアン・ムーアは、
「競馬にならなかった。直線で、行くところ、行くところで前が壁になってしまった」
と残念そうに語った。
日の丸と並んで「2011・3・11」「HOPE」と記されるシャツ。
ここドバイでも日本の震災は大きなニュースになっており、競馬場でも街でも、多くの人が見舞いの言葉をかけてくれる。
日本馬の調教スタッフや報道陣は、袖などに日の丸と「2011・3・11」という震災の日付や「HOPE」という文字の入ったシャツを着て過ごしていた。
「日本のみなさんのために自分にできることは、競馬で答えを出すことだけです」
これはブエナに乗ったムーアの言葉だが、みな、同じ思いで日々の調教とレースに力を尽くした。
ドバイワールドカップ制覇という史上初の快挙を達成した日本のホースマンが次になすべきことは――。
堂々巡りのようだが、やはり、競馬で答えを出していくしかないのだろう。