平成20年の幕開けとなる初場所。注目は、もちろん2場所連続出場停止明けの朝青龍だ。復活を期しての15日間の激闘は、見応え充分だった。そこには、2人の朝青龍が存在した。
場所前の準備期間は、約40日間。調整はおおむね順調で、稽古総見でも白鵬を圧倒。自信満々で初日に臨んだ朝青龍だった。しかし本場所の土俵に潜む魔物が、その手足に絡みついた。踏み込みの甘い、中途半端な浮ついた軽い相撲の連続。「稽古場と本場所の相撲は別物」と言われ、稽古場の力を本場所で出せない力士が多い中、朝青龍はこれまで本場所で、逆に稽古場以上の力を発揮してきた。重圧をパワーに変える先天的技術を身につけていると思っていたが、間違いだった。相撲人生最大の重圧の中では、朝青龍も他の力士同様にもがき苦しんだのだ。場所前の精彩と安定感は消えていた。
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