今回は9月5日から7日に行われた「木下グループ杯」について。日本初のチャレンジャーシリーズとなった大会の意義、そして豪華メンバーが集った大会の総評を野口さんにじっくりと振り返っていただきました。
「オリンピック予選やグランプリシリーズよりも豪華なメンバーが集ったのではないでしょうか。シーズン序盤とはいえ、全日本選手権まであと3カ月です。今回の大会は、それぞれがどんな戦略で全日本に向かっていくのかが見える、指標となった大会だと思っています」
今年から開催されることになった木下グループ杯は、ISUのチャレンジャーシリーズに位置づけられました。例年この時期はジャパンカップが開催されていましたが、ジャパンカップは主に国内の選手の出場のみ、フリーの演技のみ。チャレンジャーシリーズはISU認定の国際大会のため、ジャッジもグランプリシリーズ同様の審判で、ショート、フリーの演技を行います。さらに国際ランキングのポイント加算もあるため、非常に重要な位置づけとなりました。
「シーズン後半になってくると疲れがたまり、怪我のリスクが高まったり、緊張感が大きくなることと比べると、この時期の大会は夏の成果を出しやすいとも言えます」と野口さんも大会の意義を語ります。
男子はチャ・ジュンファン選手が優勝し、次いで友野一希選手、アメリカの樋渡知樹選手、山本草太選手、壷井達也選手と続きました。野口さんは「なんといっても、友野選手の調子の良さですね。計画性も含めて、いい位置につけたと思います」と評価します。友野、山本、壷井の3選手は全員230点台でしたが、僅差の中でも1人だけ表彰台に上れたことは、対外的な印象も良いといいます。

先月公開したインタビューでもたっぷりと語っていたように、今年は違う、と感じさせてくれる友野選手のスタート。それに対して山本選手は、気持ちと調子のかみ合わせがうまくいっていませんでした。しかし悲観することではないと野口さん。その理由とは…。
そしてまだまだ伸び盛りの壷井選手にも高評価。少し心配なのは7位だった三浦佳生選手です。「怪我の影響が大きすぎて、能力を出し切れていません」と野口さんも見立てますが、本調子でない中で毎週連続して試合に出続け、失敗しても4回転を跳び続け…というスタイルに「尋常でない計画性であり、性格であり、能力もあります。なにかスイッチが1つ変わった時点で、4回転を全部降りられるかも」。常識では推し量れない三浦選手の今後はどうなっていくのでしょうか。
女子は千葉百音選手が優勝し、坂本花織選手、三宅咲綺選手と日本勢が表彰台を独占。4位にも渡辺倫果選手が入りました。事実上千葉選手と坂本選手の対決といった形になりましたが、「千葉選手の意地が見える結果でしたね」と野口さん。そしてこの2位で坂本選手にもよりスイッチが入り、結果的に良い効果があったのではと話します。
心配なのは坂本選手とともに今季限りの引退を表明している樋口新葉選手ですが、当日は体調が絶不調だったのだそう。「ステップへの気迫がすごくて、体調不良だと気づきませんでした」と野口さんが言うほどの演技を見せました。オリンピックの3枠争いに向けて、誰もが虎視眈々と狙っていることを感じさせる結果となりました。
そして多くの方がつめかけて見守った、りくりゅうペアの演技。222.94点での優勝に野口さんは「この演技のままで金メダルが取れちゃいますね」と舌を巻きます。今季のフリーはグラディエーターを選曲。これまでの彼らのトレードマークであった明るさ、笑顔を半ば封印した形になりますが、「もうそういう域から脱却してるんだなと。本当に滑りのパワーがあります」と評します。

ポッドキャストでは以下の話題でも盛り上がりました。
- 友野選手の描くオリンピックまでの「計画」とは?
- 世界選手権出場の力があると証明した壷井選手
- 坂本・樋口、2人のラストシーズンへの向き合い方は正反対?
- もう1組のペア「ゆなすみ」は脱皮した!
- りくりゅうの選曲に隠された深い理由
ついに本格始動したオリンピックシーズン。各選手の思惑や仕上がりを改めて振り返りつつ、10月から始まるグランプリシリーズがより楽しみになる大会でした。(9月24日収録)
※ポッドキャストをお聴きいただけるのはNumberPREMIER会員限定で、このページ下部でご視聴いただけます。
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