逆風があることを分かっていながら、なぜ兄はチームに弟を呼び寄せたのか。一枚の写真を通して母が明かす、知られざる新井兄弟の姿――。<前回から続く>(原題:[鼓動 カープと広島の2026年]第4回 血縁。(後編))
不思議なもので、年月を経た家具というのは無言の語り手のように見えることがある。広島駅から車で西へ30分、静かな住宅街の新井家のリビングにはアンティークやビンテージと思おぼしき木製箪笥や鏡台が並んでいた。それらが各所に置かれた間接照明に照らされている。柔らかい光によって浮き上がった箪笥の木目は誰かの人生を映す地層のようであり、飴色になった真鍮の取っ手は、暮らした人の体温をそのまま保存しているようだった。
「どちらも私の趣味なんです」と新井家の母は言った。3人の子育てを終えた今は庭の手入れをしたり、月に一度くらい映画館に行ったりする時間を持てるようになったという。野球一家のイメージとは裏腹に、母は「ローマの休日」や「レ・ミゼラブル」を愛し、物語とともに生きる人であった。
監督と打撃コーチとして、プロ野球史上初めて一軍のベンチでともに戦うことになった兄弟、新井貴浩と良太について、彼らはなぜいつも同じ戦場に立とうとするのか、血縁という引力の先に何があるのか聞きたい。そう告げた私に母は「お答えできるか、分からないのですが」と言って、一枚の写真を見せた。1980年代半ば、新井家のリビングで撮られたものである。ブラウン管テレビの前に3人の子供たちが並び、それぞれにカメラを見つめている。
印象的なのは長男が生まれたばかりの次男を膝に抱いていることだった。
「いつもそうしていたんですよ」と母は言った。
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photograph by Hideki Sugiyama
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