#1019
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「欲のない、謙虚で美しい飛躍だった」宇野昌磨が語った“モチベーションの源泉”の変化「スケートが『やらなきゃ』から『やりたい』に」<アーカイブ記事/2021年>

演技を終えた瞬間から白い歯がこぼれ、キス&クライでは嬉しそうに手を振った。5連覇が潰えても、終始、笑顔を絶やさなかったのが全日本での彼だった。コーチに導かれ、“やらなきゃいけない”スケートから“やりたい”スケートへ。負けず嫌いはそのままに、すべてを楽しみで包み込む自然体がいま花開きつつある。(初出:Number1019号 宇野昌磨「進化は微笑みとともに」)

 穏やかな笑顔だった。全日本選手権が今季初戦となった宇野昌磨は、ショートもフリーも、そしてエキシビションも、演技が終わるたびに頬を赤らめ、幸せがこぼれ落ちるような笑顔で会場を見渡していた。

「2020年は、終わりがよかったので『良い一年だった』と最後の最後に思うことができました」

 そう振り返る。宇野にとって2020年は、どう“良い一年”だったのだろうか。

 昨季の全日本で4連覇を達成した宇野は、3月の世界選手権が中止になると、練習拠点のスイスから帰国し、ステファン・ランビエルのオンライントレーニングに参加するなど、独り練習に取り組んでいた。

「緊急事態宣言の期間は幸いにもシーズンオフと重なっていましたし、他のスポーツ競技よりは痛手が少なかったんじゃないかと思います。僕は恵まれているほうだと思って練習していました」

 コロナ禍でも悲観的にならず、やれることは最大限にやる。プロゲーマーとオンライン大会で対戦したり、ネットでの動画配信を始めたりと、これまでにないファンへのアピールにも取り組んだ。

「今まではモチベーションの源泉を自分に見出していたのですが、昨季の不振を通じて自分を振り返った時に、僕は沢山の人に支えられているんだって実感して、自分も何か貢献したいなって思い始めました。そう思い始めてから、『やらなきゃ』と思って取り組んでいたスケートが『やりたい』と感じられるようになりました」

Sunao Noto
Sunao Noto

「スイスに行くというより、帰るという感じ」

 9月には、空港に向かう車中でも動画配信してファンを楽しませた。

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photograph by Sunao Noto

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