#1110
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「監督の『その通りや』が力をくれた」タイガース・前川右京が語る「オカダの教え」とメディアに“同じ回答”を続けた理由【虎戦士インタビュー】

2024/12/10
今季一軍に定着し、打率.269、4本塁打、42打点の成績を残した前川
入団3年目にして一軍完走。才能の片鱗を見せた若きバットマンは、今季ベンチの起用に応え続け、得点力不足に悩むチームの光となった。指揮官の無言の期待を胸に刻み、来季の定位置奪取を誓う。(原題:[金言を胸に]前川右京「『その通りや』が力をくれた」)

 姿を見つけると自然と小走りになった。

 高知県安芸市で秋季キャンプを行っていた11月9日。前川は三塁ベンチ前で打撃練習を見ていた岡田前監督に「おはようございます」とあいさつした。「おう」と返ってきた。再会はDeNAとのCSファーストステージ第2戦以来、27日ぶり。タテジマのユニホームからグレー基調のトレーニングウエアに運動靴を履いていた恩師の表情は、どこか穏やかに見えた。

 選手への指導はコーチ陣を介し、選手に自ら歩みよって会話を交わさないのが岡田流。前川は、一軍で33試合に出場した昨季から今年は計116試合で打率.269、4本塁打、42打点と大幅にキャリアハイを更新した。目標に掲げた「一軍完走」も達成。紛れもなく「岡田チルドレン」の一人だった。それでも2年間で声をかけられたのは2度しかないと記憶している。

 今年の春季キャンプ中の2月20日、韓国・サムスンとの練習試合に「8番・左翼」で先発出場した時だった。1打席目の2回2死三塁から右越え本塁打を放った直後、笑顔で「ナイスバッティング」と言われた。

「今でもあれは覚えています。ちょっと気が楽になりました」

 それまで指揮官の言葉は翌日にメディアから発信される「岡田語録」を通じて情報を入手するだけ。その3日前。楽天との練習試合の6回2死一塁から一塁走者がスタートを切っているにもかかわらず、初球を打って出て中飛に倒れた。結果を追い求めすぎたゆえに起きた凡ミスだった。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Kiichi Matsumoto

0

0

0

前記事 次記事