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「透明人間になりたい」松坂大輔がメッセージをした夜…ホークス2年目「終わり」を踏みとどまらせた工藤公康監督の言葉とは?〜連載「怪物秘録」第49回〜

2024/08/06
ホークスと3年契約を結びながら1年目は登板無し。期待に応えられない現状に松坂は苦しんでいた。そして日本復帰2年目の終盤、ついにマウンドに上がる。

 透明人間になりたい――この、たった一行の悲痛な叫びにどれほどの想いが込められていたのかを考えると今も切なくなる。ホークスに入団して2年目の2016年、松坂大輔が何の脈絡もなく携帯電話に送ってきたメッセージ。頻繁にやり取りをしていたわけでもないのに、突然、舞い込んだ松坂からのSOSに仰天した。

◆◆◆

 そうでしたね(苦笑)。あれ、何だったかな。べつに追い詰められたわけでもなかったと思いますけど、ただ、純粋にそう思って送りたくなったのかな。そのへんのコンビニへも行きづらかったし、誰にも気づかれず外をゆっくり歩きたいと思ったんでしょうね。あのとき、透明人間と書いたら「ピンク・レディーか」と突っ込まれましたが、じつは世代的にそれがよくわかんなくて、僕にとっての透明人間は『ドラゴンボール』(鳥山明)でした。(主人公の悟空の仲間の)ヤムチャが戦う透明人間のスケさん。透明で相手が見えないからヤムチャが苦戦するんですよ。そのときに(親友の)クリリンが機転を利かせて(ヒロインの)ブルマのおっぱいを(師匠の)亀仙人に見せたら、興奮して吹き出した亀仙人の鼻血がかかって、真っ赤になった透明人間が見えるようになっちゃう。で、ヤムチャが勝つんです。僕にとって透明人間はそのイメージでした(笑)。

「どれだけ投げても壊れない肩」と「仙豆」が欲しかった。

 僕はずっと野球の神様はいると思っていました。なぜなら野球の神様は試練を与えるって言いますが、僕自身、「もう、いいじゃん」と思っていましたからね。そう思うってことは信じてるからなのかなと……メディアの人に「もし野球の神様が願いをひとつ叶えてくれるとしたら」と訊かれたとき、「どれだけ投げても壊れない肩とヒジが欲しい」と答えたことがあります。技術的なことは与えられちゃったらおもしろくないし、どれだけムチャな練習をしても壊れない身体が欲しいと僕はいつも思っていました。だからこそ、動きを制限されながら野球をするのは「もう、いいじゃん」と、野球の神様に文句を言いたい気持ちがあったのかもしれません。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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