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「“松坂大輔”であり続けたいと」3年でホークスを戦力外→「師匠の治療を受けてみませんか」…そして新天地への誘い~連載「怪物秘録」第50回~

2024/08/28
日本球界復帰3年目にして待望の先発登板が訪れるも目前で回避が決定。そのままホークスとの契約が終了した'17年オフ、続けていた治療がようやく実を結ぶ。

 ホークス3年目となる2017年も松坂大輔は一軍の公式戦で投げられなかった。オープン戦で結果を残しながら開幕直前に突如として右肩が上がらなくなり、その痛みが癒えることがなかったからだ。日本中の病院、治療院を訪ね歩いたが、そもそも痛みの原因がわからない。春から夏になっても、光が見えることはなかった。

◆◆◆

 そもそもは3月のオープン戦で内転筋を痛めて、それをかばって投げていたことがきっかけでした。右肩に痛みが出て、開幕前には腕が動かなくなってしまいます。さあ、開幕というときでしたから、凹みました。今日だけであってほしい、たまたま今日だけこんな強い痛みが出ただけなんだと……心の中で何度もそう祈っていました。

治まらない痛みに登板回避、不安しかなかった。

 でも、痛みが治まる気配はまったくありません。4月(15日)には福岡でのバファローズ戦に先発することが決まっていましたが、回避しました。僕が自分からそういう選択をするというのは考えられないことでした。何しろホークスに入って初めての一軍での先発ですから、僕自身、どれだけ楽しみにしていたか……電話で倉野(信次、コーチ)さんから「投げられるか」と訊かれたときに「もちろんです」と答えましたが、もし倉野さんが僕の顔を見ながら話していたら、その言葉は「もちろん」には聞こえなかったと思います。その時点での僕には不安しかありませんでした。

小誌926号「2017年の松坂世代。」取材でのポートレート Tadashi Shirasawa
小誌926号「2017年の松坂世代。」取材でのポートレート Tadashi Shirasawa

 実際、あのときは朝起きてから恐る恐る右腕を上げて痛みを確かめてみたら、「こんなに痛いのに投げられるわけないじゃん」という酷い状態でした。注射も3回打ちましたが、どうにもなりません。痛みをごまかす投げ方さえ見つからなくて……さらに登板回避の後は、原因不明の右手中指の痺れにも悩まされるようになりました。力を入れて投げるとズキーンと痛みが強く出て、そのあとジーンと響いて感覚がなくなっていくんです。次に投げるまでに「1分下さい」と言いたくなるような、今までに経験したことのない症状でした。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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