守備に就かずにMVPを受賞した打者はいない。過去、エドガー・マルティネス、デービッド・オルティスら、優れた指名打者もそれは同様だったが、この男はどうか。指標も武器に、バットだけで3度目の受賞を目指す。(原題:[投票者の視点]史上初「DHでMVP」は可能か)
2024年公式戦の約3分の1が終わった5月下旬、MLB公式ホームページをはじめとする野球専門サイトなどが両リーグのMVP予想記事をアップした。
それぞれのサイトで名前が挙がった有力候補はア・リーグがヤンキースの主軸フアン・ソト、アーロン・ジャッジ、昨季の新人王ガナー・ヘンダーソン(オリオールズ)、ボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)ら。ナ・リーグではドジャースを牽引するムーキー・ベッツと大谷翔平を推す声が多く寄せられた。
リーグMVPに専任の指名打者が選ばれたことはかつてない。もし大谷が獲得すれば史上2人目となる「両リーグでMVP」ということだけでなく、過去2度の受賞以上にインパクトのある金字塔になる。大谷は「二刀流だから凄い」のではなく、打つだけでも稀有な存在であることを、あらためて示すタイトルになるからだ。
打者専任でも際立つ大谷のWARの高さ。
確かに、今季の大谷は打者専任なのに、Wins Above Replacement(以下WAR)が高い。WARはセイバーメトリクスによって走・攻・守と投球を総合的に評価し、選手の貢献度を表す指標。野手の場合、役割の違う選手を比較するため守備位置による補正を施し、同値の大きい順に捕手、遊撃手、二塁手、中堅手、三塁手、右翼手と左翼手、一塁手となる。指名打者は当然この補正値が最も小さいにもかかわらず、大谷は5月29日時点のMLB公式ホームページで遊撃手ベッツのリーグ1位WAR3.7に次ぐ3.1をマークしていた。
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photograph by Hiroaki Yamaguchi