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「もし彼らがダービーを勝っていたら」徹底的に史実を調べ、設定に落とし込む…ファンの夢が叶う『ウマ娘』“if”の魅力《天才アグネスタキオンは?》

2024/05/20
アグネスタキオンは研究一筋の、華々しい一家の異端児という設定
アグネスタキオン、フジキセキ、エアシャカール、サトノダイヤモンド、そしてマルゼンスキー。もし彼らがダービーを勝っていたら……。そんな夢のような物語を『ウマ娘』は見せてくれる。世代最強を決める祭典で綴られる、あまりに魅力的な“if”のドラマの一端を紹介する。(原題:[夢が叶う場所]『ウマ娘』で楽しむダービーの“if”)

“最も運が良い馬が勝つ”

 今年で91回目を迎える、日本ダービーにまつわる有名な格言である。この言葉通り、これまで数多の実力馬たちが涙を呑んできた。展開のアヤやアクシデントに泣いた馬もいれば、ケガや当時の制度により出走自体が叶わなかった馬もいた。彼らが出走していれば、そして実力を出し切っていれば――。ファンの間でも永遠に続く“if談義”にひとつの可能性を示したのが、かつての名馬たちの名前と魂を受け継ぐ“ウマ娘”の物語を描く『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)だ。史実を徹底的に調べ上げ、設定や物語に落とし込むその手法が高く評価されている同作において、ダービーの“if”はどのように描かれているのだろうか? 今回はゲーム版の育成シナリオにおける描写を取り上げていきたい。

'01年皐月賞で圧倒的人気に応えたアグネスタキオン(青帽) Keiji Ishikawa
'01年皐月賞で圧倒的人気に応えたアグネスタキオン(青帽) Keiji Ishikawa

“天才”アグネスタキオンにはダービーも通過点?

 まずは2001年の皐月賞を無敗のまま、しかも完璧な内容で制したアグネスタキオン。前年の兄アグネスフライトに続くダービー兄弟制覇が期待されていたが、左前浅屈腱炎を発症して出走を断念、そのまま才能を見せきることなく引退となった。『ウマ娘』では、そんなエピソードがあるからか、マッドサイエンティスト風の“底知れない”キャラクターとして登場している。またやる気が普通以下で皐月賞に出走すると、ダービーではなくNHKマイルカップへ向かうことになるなど、さまざまな可能性が用意されているのも特徴だ。史実では出走していないダービーでは、ライバルのマンハッタンカフェからレースを前に「走り方が普段と違う気がする」と指摘される。そして勝利後は「これはかなり……興味深いな」と、自分の可能性について一定の手応えを得るのである。菊花賞時に判明するのだが、自分の体を使って新たな走り方を実験していたのだ。あくまで実験中のため確信的なことを述べるには至らず、菊花賞に向けて意気上がるトレーナーには「あまり期待はしないでおくように!」と語るのみだった。このイベントは、現実では全サラブレッドの頂点であるダービーであるにもかかわらず淡々と進む。多くの可能性を残したままターフを去った“天才”アグネスタキオンにとっては、ケガがなかったとしたらダービーも通過点に過ぎなかったのかもしれない。だから特別なイベントにならなかったのだろう。

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photograph by ©Cygames, inc

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