特別増刊
Special Feature

記事を
ブックマークする

ネイサン・チェンが語る“幻の世界選手権”「ユヅには4回転アクセルをやってもらい、刺激しあいたい」<ドキュメント/2020年>

2019.12.7 Grand Prix Final
昨年末のトリノGPファイナルで羽生結弦を抑え、世界最高得点で3連覇を達成。中止となった3月の世界選手権でも3連覇が期待されていた世界王者が、モントリオールに向け秘めていた羽生の4回転アクセルへの対抗策とは――。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2019-2020シーズン総集編[幻の世界選手権を語る]ネイサン・チェン「ぼくはまだ限界まで出し切ってない」)

 日本時間3月12日、新型コロナウイルスの影響により、モントリオール世界選手権の開催中止が発表された2時間後、全米フィギュアスケート連盟はネイサン・チェンの緊急共同電話会見をセットアップした。

「全ての選手は、この大会のために長い時間をかけて練習し、準備をしてきました。でもこのウイルスがどれほど早く世界に広がっているかと考えると、中止は正しい判断だったと思う」

 チェンにとって、3度目の世界タイトルがかかっている大会だった。

「何も世界選手権は、今回が最後というわけではありませんし」

 チェンは、そう付け加えた。

「この決定が出される前から、ぼくは周りの人たちの心配をしていました。ラファエルは特に遠征で色んなところに行っていたので、大丈夫かなと思っていたんです」

 3月4日からエストニアのタリンで開催された世界ジュニア選手権に、チェンのコーチのラファエル・アルトゥニアンが来ていたのはちょっと意外だった。世界選手権中止が発表される前でもあり、メインコーチの彼はカリフォルニアのホームリンクに残って、チェンやマライア・ベルなどシニア選手の仕上げに専念しているだろうと思っていたのである。

「ネイサンは自分のやることをわかっていますから。今更私がいなくても困ることはないんです。ネイサンに限らず、私の役割は、選手が私に頼らなくても良いように育てることだと思っています」

2019.12.5 Grand Prix Final photo: Tsutomu Takasu
2019.12.5 Grand Prix Final photo: Tsutomu Takasu

コーチから4000km離れ、学業とトレーニングを両立。

 アルトゥニアンコーチがそう語ったように、ここ2シーズン、チェンはコーチから4000kmも離れたコネチカット州のイェール大学で寮生活を送りながら、自主トレーニングを続けてきた。12月のGPファイナルの試合終了後には、チェンはアルトゥニアンコーチとの練習状況についてこう説明している。

会員になると続きをお読みいただけます。
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Tsutomu Kishimoto

0

0

0

前記事 次記事