大舞台で日本フィギュア陣が対峙する強者たち。女子には異次元の強さで君臨する新星が現われ、男子には羽生結弦との決着に向かう宿敵がいる。彼らの五輪シーズンの動向を直前レポートする。
過去30年ほどの冬季オリンピックの中で、今回の北京のフィギュアスケート女子シングルほどメダリストの予想図が明確なものは思い出せない。ロシア勢が表彰台を独占するのではと言われているが、分けても一人抜きん出ているのが今季ジュニアから上がってきたばかりの15歳のカミラ・ワリエワだ。北京で彼女が今季のこれまでの大会と同じような演技を見せたなら、おそらく彼女の金メダルは間違いないだろう。
ワリエワは1月の欧州選手権ではショートで90.45を出し、女子として初の90点超えを果たした。フリーでは3アクセルの転倒などミスもあったが、4回転を3度決めて168.61、総合259.06を得た。
「とても嬉しくて、言葉になりません。毎日練習してきたことは無駄ではなかったんだなと思いました。欧州チャンピオンになるのは子供の頃からの夢でした」
会見でそう語ったワリエワは、過去10年間次々とチャンピオンを送り出してきたエテリ・トゥトベリーゼのスクールの最高傑作とも言える。3アクセルに加えて、トウループとサルコウの2種類の4回転を3度フリーに組み込み、しかもほぼ全種のジャンプを両手を頭上で揃えた姿勢で跳ぶ。4回転の種類においては、同門の先輩アレクサンドラ・トゥルソワの方が上だが、成功率の高さでは現在の女子でワリエワに勝る選手はいない。加えて180度に開脚できる体の柔軟性、スピンの軸の細さ、そしてどんなポーズをとっても絵になる恵まれた体形と長い四肢。神様は不公平ではないかと嘆きたくなるほどの才能だ。
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photograph by AFLO/Getty Images