#1053
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「ジャブのヒット数が…」データが裏付ける井上尚弥の“パーフェクトな強さ”<他階級強豪との徹底比較>

2024/01/26
2023年末の試合で史上2人目の2階級での4団体統一を果たした井上尚弥
他階級で圧倒的な実力を発揮する猛者たちと世界10傑を争う怪物は、一体何が凄いのか。データから読み取れる唯一無二の強さとは―。(初出:Number1053号 [他階級強豪との比較]データが裏付けるパーフェクトな強さ。)

 野球のスタットキャストにテニスのホークアイ。スポーツでもビッグデータの活用が急速に進むが、ボクシングにもパンチに関するデータがある。米国のパンチ統計会社「COMPUBOX」が1980年代から収集してきた世界のボクサーたちのパンチに関するデータだ。テレビ中継の資料などに使われてきたこのデータを元に、階級の概念を超えた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」に名を連ねる実力者たちと井上の比較を試みた。

 比較対象としたのは、米専門誌『リング』、米スポーツ専門局「ESPN」、そして英専門誌『ボクシングニュース』の3メディアが5月中旬に発表したPFPランキングのトップ10に入っている計14選手(うち12人が現役王者)。

 比較するのは、(1)手数、(2)ジャブのヒット数、(3)パワーパンチのヒット数、(4)被弾率、(5)ヒット率と被弾率の差の5項目。(1)は積極性、(2)と(3)は攻撃力(主導権)、(4)は防御力、(5)は対戦相手への優勢度を表すと考えていいだろう。

 5項目の中で井上が最も上位にランクされたのが、ジャブのヒット数だ。1位のゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)に次ぎ、3位のドミトリー・ビボル(ロシア)を上回る2位。村田諒太を追い込んだゴロフキンの硬質なジャブ、“カネロ”ことサウル・アルバレス(メキシコ)の接近を阻んだビボルの長くて速いジャブは記憶に新しい。4位のオレクサンドル・ウシクと5位のワシル・ロマチェンコ(ともにウクライナ)はともに五輪金メダリストの技巧派サウスポー。井上以外の4人は旧ソ連出身のアマチュアエリートだ。当代きってのジャバーたちとトップ5を形成する事実は、「一番重視しているパンチは左ジャブ」と日ごろより公言している井上にとっても誇れるものに違いない。

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photograph by Yuki Suenaga
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