#1053
巻頭特集

記事を
ブックマークする

[ボクシング博士が見たドネア2]村田諒太「圧倒的KOとドネアの“異変”」

2022/06/16
ゲスト解説者として、現地で一戦を観戦していた“ボクシング博士”は試合開始直前、第1戦とは異なるベテランの姿に違和感を覚えていた。それはゴングの後さらに強まる――。

 勝負は、井上尚弥選手が1ラウンド終了間際にダウンを奪った右クロスで、事実上、決まったと言っていいでしょう。ノニト・ドネア選手も打ちに行っていたため、井上選手のパンチが見えておらず、強烈なクロスがテンプルにモロに入りました。

 あの大きなダメージを、ラウンド間インターバルのたった1分間で回復させるのは難しい。それほど十分な破壊力を持った一撃でした。

 ただ、その後、井上選手が警戒心を緩めることはありませんでした。ドネア選手は前回の対戦でも、劣勢に立たされた後も左フックの一発を狙い続けてきましたから。

 実際に拳を交えた井上選手本人がどう感じていたかはわかりませんが、もしドネア選手のパンチに前回のような重さを感じていなかったとしたら、「最悪、相打ちになってもいい」と思えるので、カウンターを取りやすくなったのではないかと思います。

 2ラウンド、井上選手は開始30秒ほどで、ドネア選手を左フックでぐらつかせます。詰め方も素晴らしく、相手を仕留めていく流れが完全に出来上がっていました。そして1分20秒過ぎ、連打でコーナーに詰め、左フックでダウンを奪い、レフェリーが試合を止めてTKO勝利となったわけです。まさに、成るべくして成った2ラウンドKO勝利でした。井上選手の今の実力が、思う存分出た試合だったと思います。

 じつはこの試合で、僕がまず気になったのは、リングに上がったドネア選手が細く見えたことでした。

 試合が始まると、その違和感はさらに強まります。開始早々、あいさつ代わりとばかりに代名詞とも言える左フックを見舞ったわけですが、この左フックにも、いつものような「ズドンと重い」印象を受けませんでした。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Naoki Fukuda

0

0

0

前記事 次記事