9月18日から21日に行われたミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックの最終予選。日本の長岡柚奈・森口澄士の「ゆなすみ」ペアが3位に入り、見事個人ペアでの2枠目を獲得しました。彼らの演技と成長の要因、そしてAIN(独立中立選手)として出場するロシア勢の評価は?野口さんにじっくり語っていただきました。
「ミスはありましたが、この緊張する試合の中で3位に入れたということは、本当に歴史的瞬間だと思います。フィギュアの長い歴史の中で、日本からペアが2組出るのは初めてのこと。それだけ日本のペアが育ってきた証拠、ペアの強豪国になってきた証拠だと思います」
今年3月の世界選手権でりくりゅうペアが優勝し、複数枠を獲得できる可能性は十分ありましたが、ゆなすみペアはショートからフリーに進めず、日本のペア出場枠は「1」にとどまっていました。しかし今回の最終予選で3位に入り、自分たちで五輪の枠を獲得したのです。

世界選手権から半年、飛躍の要因とは
9月5日から7日に開催された木下グループ杯にも出場し、3位となっていたゆなすみペア。その時の演技を見ていた野口さんは「別格感があった」と評価します。「中堅どころぐらいの滑りをしていたので、最終予選でも余裕で優勝してしまうのでは? と思ったほどです。ショートで4位だったときも、巻き返すことができるだろうなと思っていました」といい、実際その通りになりました。
半年前の世界選手権ではフリーに進めなかったことを考えると、目覚ましい成長。その要因の1つにはコーチの変更がありました。もともとはりくりゅうと同じカナダを拠点としていましたが、今シーズンから拠点をドイツへと変更したのです。
ペアには2種類の潮流があり、北米系(アメリカ、カナダ)はスケーティングで魅せる、力強い演技。対してヨーロッパ、ロシア系は美しさを追求し、多彩な動きが特徴です。
「りくりゅうは2人ともマッスル系なので、北米系にぴったりなんです。ゆなすみは特に長岡選手が筋肉に頼って動いているタイプではないので、ロシア系について自分の身体の動かし方の正解を見つけた感じがありますね」。これはどちらがいい、悪いではなく、相性の問題。自分たちに合ったスタイルを見つけられたことが躍進のきっかけになったと野口さんは話します。
日本勢ではアイスダンスでも吉田唄菜・森田真沙也の「うたまさ」ペアが出場しましたが、こちらは7位で個人の枠獲得とはならず。しかし日本は男女ともにシングルが強く、五輪団体戦にほぼ確実に出場できると考えられるため、団体戦での出場が大いに考えられます。「メダルに貢献できるように頑張ってきてほしいですね」。これからの伸びしろにも注目です。

女子より男子のほうが脅威に?ロシア勢の実力は
今回の最終予選には、ロシア勢がAIN(独立中立選手)扱いで出場。男女シングルともに優勝して、「1」の枠を獲得しました。ソチオリンピックから北京オリンピックまで、無類の強さを誇ったロシア女子。今回オリンピックに出場してくるなら、坂本花織選手や千葉百音選手の強力なライバルとなることは間違いないため、野口さんも警戒しながらチェックしていました。
結果的にアデリア・ペトロシャン選手が優勝しましたが、野口さんは「個人的な印象としては、思ったほどではなかったという感じです。そうであってほしい、という願望も含まれていると思いますが(笑)」といいいます。国内の選手権では4回転も降りているという情報がありましたが、今回は4回転なし。滑りについてもスピード感はありますが、坂本選手、千葉選手と比べてずば抜けているかというとそうではない、と評価します。
男子で優勝したピョートル・グメンニク選手は、ジュニア時代にジュニア世界選手権で3位に入るなど実績ある選手。しかし5年ほど見ないうちに少年から精悍な男性という印象に変わりました。
国内大会では330点超えのデータもあるグメンニク選手ですが、今回はジャンプのミスなどが多く得点は伸びませんでした。しかし4回転ルッツ、4回転フリップを持ち、5本の4回転にチャレンジ。現状、世界では4回転5本をノーミスで決められるのはイリア・マリニン選手だけですが、もしこれが成功したら…「男子のほうが怖いかも」と野口さんは言います。最終グループには必ず入ってくるであろう実力を持つグメンニク選手。オリンピックでは台風の目となるかもしれません。
ポッドキャストでは以下の話題でも盛り上がりました。
- ペアが2人で演技することで生まれる相乗効果とは
- ゆなすみは4年後りくりゅうのような存在に…2人の魅力
- 森口選手の包容力が素晴らしい
- ロシア女子は「PCS1位になることはまずない」
- 「ミスしてもいいから4回転入れておけ」カルチャーの違い
- 個性的な滑りと性格なジャンプ。ロシアはいい意味で変わらない
ペアの新たな歴史を開いたゆなすみペア。今後の世界の舞台での戦いにも大きな注目が集まります!(9月24日収録)
※ポッドキャストをお聴きいただけるのはNumberPREMIER会員限定で、このページ下部でご視聴いただけます。
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