一匹狼として我が道を歩んできた男は、虎軍団の 一 員となってからは、若い仲間を励まし、叱咤し、寄り添いながらその成長を促してきた。そして今はキャプテンとして、チームの変革に己の全てを捧げている。(初出:Number932号福留孝介[キャプテンが語る覚悟]「グラウンド上の変革者として」)
左胸の「C」マークは近くで見ると、思っていたよりも大きかった。ユニホーム全体のバランスを崩しかねないほどだ。ただ、福留の厚い胸板やどっしりとした骨格には不思議なほどしっくりとおさまっていた。
「全然、意識していないよ」
キャプテンを意味する「C」を見ながらチーム最年長の4番打者は少し笑った。タイガース82年の歴史で他球団からやってきた選手がそれをつけるのは初めてのことだ。
昨年11月、福留は監督の金本知憲に呼ばれ、こう告げられた。
「キャプテンをやってくれ。鳥谷を身軽にしてやってほしい。お前しかいないんだ」
金本が就任した昨シーズン、「超変革」の象徴となった生え抜きキャプテン鳥谷敬は、多くを背負った末に聖域だった遊撃のポジションを失い、経験したことのない不振に終わった。では代わりに背負えるのは誰か。金本は自らと同じく、他球団からやってきた4番打者にそれを託した。
以来、福留の一挙一動は改革の体現者として、捉えられるようになる。
「生え抜きの選手がキャプテンなら、こんなに騒がれることもないでしょ。よく俺がやることが特別だと言われるけど、ずっと当たり前のことを普通にやっているだけ」
その言動は胸のマークには左右されない。例えば、まだ肩書きのなかった昨年6月の広島戦、中谷将大が打球を一心に追うあまり味方と激突し、サヨナラ負けとなるエラーを犯した。呆然と立ち尽くす23歳に福留は右翼から駆け寄り、こう言った。
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photograph by Takashi Shimizu