前半は長友で守り、後半は三笘で攻める。それが勝利の方程式だった。絶体絶命のピンチを何度も救い、ベンチからもチームを鼓舞し続ける。36歳で挑んだ4度目のW杯は、死闘の末にまたもベスト16で敗れた。4年に1度の“祭り”が終わり、熱き男が静かに語る思いとは――。
スーパーサイヤ人は、実在した。実物は愛媛県生まれで、戦闘服の色は青だった。
4年前のロシアW杯直前、日本代表は強化試合で不甲斐ない結果が続き、猛烈な批判を浴びた。そんな重苦しい雰囲気を変えるべく、長友佑都は“変身”した。
「あの時期は、いろいろなところで批判されているのも目にしましたし、すごく悔しかった。チームの空気を、思いっきり変えたろうと思ったんです。僕自身、ギラギラした気持ち、戦闘モードで臨みたかった。ブリーチってこんなに痛いのかって、びっくりしましたけどね(笑)」
幼い頃に憧れた漫画『ドラゴンボール』を真似して、髪を金色に染めた。左サイドにスーパーサイヤ人を得た日本は下馬評を覆し、見事にグループステージを突破した。
W杯出場は今回で4度目。過去の経験と修行によって、長友は“特殊能力”を身に付けた。今は批判への怒りや悔しさがなくても、スーパーサイヤ人に変身できる。カタールへの出発前にこう話していた。
「W杯の舞台に立てば“自分はやれる”っていう自信と確信みたいなものがあるんです。僕はW杯でスーパーサイヤ人のようなゾーンに入る。ロシア大会も含めて成功体験があるので、あのゾーンに持っていければ問題ないなって。そしてゾーンへの入れ方も、自分でわかっている。僕は子供の頃からお祭り男なんですよ。愛媛県西条市の生まれで、幼い頃から毎年10月の『西条まつり』が楽しみで仕方がなかった。僕にとってW杯は祭りです。しかも4年に1度しかない。4年分の楽しみを爆発させる場だし、爆発のさせ方も知っているからこそ、今は落ち着いているんです」
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photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA