世界で唯一、W杯全大会に出場し、最多5度の優勝を経験するブラジル。エンブレムの上に輝く5つの星は、サッカーの国と呼ばれるブラジルの誇りを象徴している。
しかし、'02年の優勝を最後に、近年はトロフィーを掲げることが出来ずにいる。'06年はフランスに、'10年はオランダに敗れ、準々決勝で姿を消した。'14年は自国開催だったが、ネイマールの負傷離脱後、準決勝でドイツに1-7の歴史的大敗。'18年は準々決勝のベルギー戦で敗退した。
この20年間、W杯でのブラジルに何が起こっていたのか――。
'02年日韓W杯で主力の一人として優勝に貢献したロベルト・カルロス。自身2度目のW杯となった同大会でブラジルが栄光に輝いた要因を、彼はこう分析する。
「セレソンを取り巻く環境、チームの雰囲気、プレースタイル、全員のプロ意識や責任感、友情。全てが完璧だった。厳しい試合もあったけど、結束力で乗り越えた。そして、全員がサッカーを心の底から楽しんでいた。そういう状況を生み出したルイス・フェリペ・スコラーリ監督が素晴らしかった。彼は独特のユーモアと生真面目さを併せ持つ人物で、ピッチの内外のあらゆる困難に瞬時に対応できる監督だった」
ブラジルの伝統の4バックではなく、守備的だと批判された3バックを採用しながら、攻撃的なチームを作り上げたスコラーリの手腕。だが、ロベルト・カルロスがもっとも印象に残るのは、チーム内の絆だ。
「初戦前日に主将のエメルソンが負傷離脱した時、フェリポン(スコラーリの愛称)が5人の選手を呼んで“キャプテンズ”を結成したんだ。正式な主将はカフー、攻撃のリーダーはロナウドとリバウド、守備のリーダーはホッキ・ジュニオール、そして僕が“おしゃべりのリーダー”だった(笑)。勝ちたいという気持ちから、みんなにハッパをかけたり、議論したり、いつも笑っていたからね。それは先輩たちを見習ったことだ。ロマーリオ、ドゥンガ、レオナルド、カレッカ、タファレル……。彼らから学んだ伝統が、'02年に生かされたんだ」
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