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[タイムシフト解説]戸田和幸が語るトルコ戦「20年後の敗因分析」

2022/07/01
史上初のグループステージ突破からわずか4日後、雨の宮城スタジアムに、重苦しい静寂が訪れた――。序盤の失点が響き、越えられなかったベスト8への壁。日本はなぜ敗れ、“赤髪のボランチ”は何を感じたのか。指導者として活躍する20年後の視点で戦術分析する。

 人間とは、忘れる生き物――。

 記憶に関する実験的研究の先駆者として知られるドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの有名な言葉だ。

 人の記憶は驚くほどアテにならない。それが20年前の出来事ともなれば、なおさらだろう。一億総狂騒曲――そんな未曾有の事態となった2002年の日韓ワールドカップもまた、例外ではあるまい。

 グループステージで見事な戦いを演じ、人々を熱狂の渦に巻き込んだ日本代表はしかし、ベスト16で力尽きる。宴の終幕となったトルコとの決戦。チームのヘソとも言うべきボランチを担った戸田和幸は「よく覚えていないんです」と話す。

 トルコがどんな布陣で戦っていたのか。その記憶も判然としない。改めて、試合を見返したことがあったかどうか、それさえも覚えていないという。

「そもそも自分の試合を見るのが嫌だったんです。どうしても粗探しになっちゃうので。才能豊かなレベルの高い人たちの身のこなしとは違うので、見ていると、つらくなるんです」

 忘却の理由はしかし、それだけではないだろう。試合を含め、数々の出来事を詳細に記憶する余裕がないほど、肉体の限界まで力を尽くし、戦っていたことの裏返しでもあるはずだ。事実、大会後にオーバートレーニング症候群になっている。

「本当に体が動かなくなって……。もう、トルコ戦の時点で肉体的にはギリギリでしたね。身体能力を含め、単純に僕の能力の問題ですが、ベルギーとの初戦から目一杯やってきたので」

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photograph by Kiichi Matsumoto / AFLO

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