昨季ヤクルトを優勝に導いた原動力はリリーフ陣だった。7回今野、8回清水、9回マクガフ――勝利をもぎとる盤石の布陣をいかにして築いたのか。選手の特性を見極め、戦力を的確に整備した投手コーチが、その舞台裏を語る。
「たまたまうまくいっただけですよ……」
昨年日本一に輝いた伊藤智仁投手コーチは言った。リーグワースト防御率だった投手陣を再建すべく4年ぶりに古巣に復帰した'21年。前年4.61だったチーム防御率は3.48に改善した。
先発ローテーションの再構築に成功したのはもちろんだが、「勝利の方程式」と呼ばれるリリーフ陣の再編も光った。特に7回・今野龍太、8回・清水昇、そしてクローザーを託された9回のスコット・マクガフの3人は盤石でチームを日本一に導いた。
「開幕当初は9回が石山(泰稚)で、7回がマクガフの予定でした。投げているボールも悪くないし、決して調子も悪くなかったのに、なかなか石山に結果が出ない。そこで本人のためにも配置転換をしました」
就任早々、伊藤コーチは各投手と面談を行い、それぞれに課題や目標を与えている。
「たとえば、清水には真っ直ぐと縦変化だけではなく、横の変化を磨くこと。今野にはストロングポイントを生かしつつ、ウィークポイントをどうやって消していくか、そんなことを話しました」
昨シーズン、今野は64試合、清水は72試合、マクガフは66試合に登板している。まさにフル稼働してつかみ取った優勝だった。
「理想は年間50~55試合ぐらいだから、この3人に依存しすぎましたね。他の投手を育てきれなかった点は反省しています」
反省の弁を口にする伊藤だが、昨年のペナントレース終盤、首位争いが混沌とする中で高津臣吾監督、伊藤コーチは「優勝への秘策」を講じている。
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photograph by Naoya Sanuki/Nanae Suzuki/Hideki Sugiyama