#1045
巻頭特集

記事を
ブックマークする

[先駆者・本田武史の技術解説]全日本選手権で見えた3連覇への照準

全日本で初披露したSPの、つなぎの充実と激しくも美しいステップ。フリーでついに挑んだ4回転アクセルに垣間見える、膨大な練習の蓄積。3連覇がかかる五輪シーズンの特別なプログラムに散りばめられた、羽生結弦ならではの卓越した技術を、4回転の先駆者が解き明かす。

 今季の注目の1つは、新しいショートプログラム『序奏とロンド・カプリチオーソ』です。選曲という点では、本来はバイオリンの曲をピアノ演奏にしたことは、意外性があって良いなと思いました。皆が知っている王道の曲で、違うアレンジ、というのはすごく印象に残りやすい。勝てる曲選びといえるでしょう。

 この曲はバイオリンによる激しい曲調のイメージがあったので、冒頭の序奏の部分を聞いた時に「こんな静かな解釈もあるのか」と思いました。しかし羽生選手が滑り始めると、身体の動かし方が音に溶け込んでいくように感じました。

 演奏は清塚信也さんですから、2人で編曲を相談したと思いますが、全体の流れは素晴らしいです。序盤はゆったりと始まり、ジャンプに集中できるような曲調になっていますし、後半は一気に盛り上がっていく。最後のステップでガッと動いて見せ場を作る理想的な流れです。2分50秒のなかで、これだけ変化があると、見ていてもあっという間に終わる印象です。

 ゆったりとした音の取り方や身体の使い方にはジェフリー・バトル氏の振付を感じますし、激しく動く場面のドラマティックさはシェイ=リーン・ボーン氏のアイディアが伝わってくる。ブライアン・オーサーコーチも加わったといいますし、皆さんのコラボレーションで生まれた作品です。

 ショートの4回転ジャンプは、安定感のあるサルコウとトウループです。その分、ジャンプの入りは音楽との調和が、非常に細かく考えられたものになっています。

会員になると続きをお読みいただけます。
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Naoyoshi Sueishi

0

0

0

前記事 次記事