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[当代最強牝馬]クロノジェネシス「人馬一体の極致」

2021/10/07
今年の宝塚記念では、負傷の北村からルメールへ乗り替わるも、見事に連覇を達成
やがて絶対女王となる芦毛を3年前に預かった斉藤調教師、そのしなやかな馬体にデビュー前から跨ってきた北村ジョッキー。成長を間近で見た2人がグランプリ3連覇ホースの真髄を語った。

 限りなく黒に近いグレーに、微かにポツン、ポツンと明るい光が浮かんだような、印象的な芦毛の馬体。そこから繰り出される、まるで意志の強さがそのまま形になったようなエネルギッシュな走りで、クロノジェネシスは現役ながらすでに歴史的名馬と呼んでいい実績を残している。彼女はいったいどんな過程を経て、競走馬としてこれほどまでの高みに達したのだろうか?

 2018年6月6日、2歳夏の初めにクロノジェネシスが栗東の厩舎へ入厩したときのことを、管理する調教師の斉藤崇史はこんなふうに振り返る。

「入ってきたときから、北海道のノーザンファームでの評判通り、いい馬だなと思いました。フットワークもいいし、背中もいい、スピードもある。課題はカイバ食いの細さで、そこだけでしたね。それがあったので、調教もやりすぎないように、レースも使いすぎないようにやっていました」

 若い牝馬でカイバ食いが問題となるのはよく聞く話だ。食が細いと馬体重が減り、調教の量と強度の確保に苦労する。しかし斉藤は、それを「牝馬だから」と考えることを決してよしとしない。

「牡牝に関係なく、よく食べる馬もいますし、そうでない馬もいます。それは人間と同じです。牝馬だからここに気をつける、というものもなくて、1頭1頭をしっかり見て、その個性をどう伸ばすか、競馬でいい結果を出せるか試行錯誤していくだけ。そう考えながらやっています」

 例えばここ15年ほど、ウオッカの登場あたりから頻繁に耳にするようになった「牝馬が強い時代」というフレーズにも、だから軽々しく、反射的に頷いたりはしない。

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photograph by Photostud

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