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「オレは何もしない監督だ」落合博満はいかに巨人、阪神との頂上決戦を制し、“中日黄金時代”を築いたのか「選手に気分よく野球をやらせるのが監督の仕事」《特別インタビュー》
花散らしの雨が止んだ昼下がり、大選手にして名将としても鳴らした当代きっての野球人と会うため、私は約束していた場所に赴いた。ドアを開け、エントランスに通され、ふと見ると黒ネコの顔が刺繍されたスリッパが置いてある。ずいぶんかわいいスリッパだなあ……取材する部屋で待つこと数分、ぬっと足が入ってきた。さっきの黒ネコと目が合った。顔を上げると球場で見てきた人だった。空気が急に張りつめた。
椅子に座り、落合博満と向きあい、来意を伝える。中日の監督として阪神岡田彰布監督や巨人原辰徳監督としのぎを削った3強時代における勝負の緊迫感について、予告先発制でなかった頃の駆け引きについて訊きたい……落合は表情ひとつ変えず、沈黙がつづく。そして重い口を開いた。
「相手は関係ないよ」
落合はこうも言った。
「オレはなにもしない監督だ」
得体の知れなさは、あの頃となにも変わっていなかった。
「奇襲だというけれどウチとすればコイツしかいない」
大一番を目前にして、巨人ベンチが急に慌ただしくなった。試合開始まで40分を切り新たに相手先発投手のデータを取り寄せてナインを集める。もうすぐ決戦がはじまるというのに、東京ドームは蜂の巣をつついたような騒々しさである。
2007年10月18日。
落合監督が率いる中日はシーズンを2位で終えるとクライマックスシリーズ(CS)の第1ステージを、岡田阪神に2連勝して勝ち上がり、リーグ優勝を果たした原巨人に第2ステージで挑もうとしていた。
第1戦開始前の午後5時20分、グラウンドに現れた落合は原とメンバー表を交換した。原が過ちに気づいたのはその時である。一塁ベンチに戻ると顔をこわばらせてメンバー表を指さす。相手先発は有力とされた山井大介ではなく、小笠原孝だったのだ。
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