男は帽子を目深にかぶり直した。寒風吹きすさぶ駐車スペースに背を向けると、大型ショッピングモール内の通路を速足で進み始めた。
季節は年の瀬。あと数十時間で2025年が終わる慌ただしさも相まって、急ぎ足の買い物客は皆、大柄な地元球団の人気選手に気付かない。滅多にないノーマークの環境にも助けられ、意外なほどすんなりと目的地の映画館に到着した。
『栄光のバックホーム』
タイトルを確認すると、上映開始時間ぎりぎりのタイミングで館内に足を踏み入れた。帽子のつばを下げたまま、最後方の一番端へ。最も目立たない特等席に体を沈め、135分間、元チームメートの短すぎた人生を目に焼きつけた。
「一緒にプレーした時間はほとんどなかったんですけど、ちょっとの間でも横田と一緒にユニホームを着てグラウンドに立てた事実は変わらない。僕の中でそこが薄れることはないので」
映画の主人公、元阪神の横田慎太郎は大山悠輔にとって1歳下の“先輩”だった。2017年2月、プロ1年目の大山が初めて参加した沖縄・宜野座キャンプの途中に横田の脳腫瘍が判明。壮絶なリハビリを戦い抜いた末、2023年7月18日、28歳の若さで天国へ旅立った。
2人が同じ空間で汗を流した時間は実質、沖縄での10日ほどしかない。一方で独身寮「虎風荘」の自室が同じ階にあったこともあり、横田が2019年限りで現役を引退するまでの3年弱、フロアですれ違うたびに冗談を飛ばし合う仲でもあった。
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※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
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