#995
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<伝統の10番を背負って> 市立船橋・北嶋秀朗/カレン・ロバート 「色褪せぬ“和”、終わらぬ“挑戦”」

2020/01/25
左からカレン・ロバート、北嶋秀朗。
戦後では国見、帝京に次ぐ5度の選手権制覇を果たした。代名詞ともなった組織的な守備とキレ味鋭い速攻は、いかにして作られたのか。10番を背負ったエース2人が鬼監督と過ごした日々とイチフナの強さの秘密を明かす。(Number995号掲載)

 イチフナの魂を刻んだブルーの横断幕が、いつも試合のスタンドには掲げられている。

 和以征技(わいせいぎ)。

 チームワークを以って、テクニックを征す。代々、受け継がれてきた一体感ある組織力によって市立船橋高校サッカー部は、帝京、国見に次いで戦後3番目に多い5度の選手権制覇を果たしてきた。布啓一郎監督のもと全国有数の強豪校に変貌を遂げ、1994年度の初優勝から9年間で4度も頂点に立っている。

「和以征技は布先生がよく使っていた言葉です。和が強くなるとどの相手にも勝てるし、いかようにも己を高められるんだと。本当にそのとおりだなって思うんです」

 声の主はイチフナ史上最高のストライカーと呼ばれた北嶋秀朗。41歳になった彼は現役引退後、指導者のキャリアを歩んでいる。今シーズンは大宮アルディージャのコーチを務めることに。高校で教わったことが彼の指導哲学のベースにある。

 強固な「和」はいかにして構築されていったのか。記事のテーマを伝えると北嶋はまず布との出会いから語り始めていく――。

布監督の口説き、そして後悔。

 '93年、中3になって進路を考えていたころ、32歳の青年監督から直接口説かれた言葉は今なお忘れていない。

「キミはいい選手で、ダイヤの原石であることは間違いない。磨いていく手伝いを自分にやらせてほしい。そしてキミ自身も磨く努力をしてほしい」

 自分が出る試合には何度も視察に来てくれていた。真剣な眼差しと熱意に心を打ち抜かれ、入部を決めた。しかし程なくして「間違ったかな」と北嶋少年を後悔の念が襲う。入部当初の“やっちまった感”はイチフナあるあるの一つでもある。鬼の監督に、鬼の練習。どこを探しても仏はいない。

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photograph by AFLO

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