道具の進化によって、極地遠征の難易度が昔よりもあきらかに低くなっている、と思いこんでいた。しかし読後には、そうとも言い切れないのではないか、と考えるようになった。例えば、未踏峰だったエベレストの頂をマロリーが目指した時代よりも、アウトドアで使用する服ははるかに軽く、暖かく進化した。だがその一方で、肝心の人間の環境への適応力が落ちてしまった。寒さにも弱くなったがゆえに、昔と比べて高所登山が容易になったとは言えない。科学技術に頼ることになった分、人間の身体機能があらゆる意味で低下していることを、本書は実体験に基づいて端的に示してくれる。
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