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今なお読者を山へと誘う、百年前の山行の記録。~『山と渓谷』は元は本の名前だったのだ~

2017/04/24

 明治、大正、昭和の登山、山旅を綴った随筆・紀行文集だ。昭和4年(1929年)出版以来、本書は戦前戦後を通じて読み継がれ、タイトルは出版社名にまでなった。日本の山岳文学でこれほど愛読されている作品は稀だ。読むたびに山や渓流への“懐かしさ”がよみがえり、本書に綴られた、山々、渓流、山里の人たちまでもが身近に感じられる。こうして読むものを山へと誘ってくれた。

 英文学者の著者は、富山県生まれ、立山、剣岳を仰ぎ見て育った。病弱で登山を始めたのは大学卒業後の24歳から。そんな回り道が西欧のアルピニズムに感化された登山家とは一線を画す、「自然の征服という言葉を嫌う」文人散策者のような“日本の登山家”を生んだのだろう。

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photograph by Sports Graphic Number

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