五輪出場は「小さい頃からの夢」だった。7月中旬、ウィンブルドンから帰国した日比野菜緒は記者会見に臨み、「四大大会よりもフェドカップ(女子の国別対抗戦)やオリンピックは大事な大会です」と代表への思いを語った。
ジュニアの四大大会も経験したが、当時は国内では二番手グループの一人だった。ロンドン、リオ五輪を目指す日本協会の強化策でも、中核は尾崎里紗、穂積絵莉といった選手で、日比野はその背中を見ていた。だから、18歳でのプロ転向にも迷いがあった。「テニスなんて好きじゃない」――そんな屈折した思いを口にしたこともある。今なら結果が出ないことへの言い訳と自己分析できるが、当時は実際、同年代と比較されて嫌気がさすこともあったという。ただ、プロ転向を決めたのも、そして五輪代表を勝ち取った原動力も、もとをたどればライバルへのギラギラした思いだったに違いない。
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photograph by Hiromasa Mano