「うまいな、ヒンギス」
思わず声が出てしまった。モニターに映っていたのは、ウィンブルドン女子ダブルス決勝。サニア・ミルザと組んだマルチナ・ヒンギスがロシアペアを第3セット2-5から逆転で破った試合だ。「これ以上、ドラマチックな勝ち方があるかしら」。'90年代に単複とも世界ランキング1位を極めた元女王は、34歳なりの落ち着きを保ちつつ、それでも心の底からうれしそうに話した。
ヒンギスでなかったら、画面に目が吸い寄せられることもなかっただろう。彼女のダブルスは常にプレーが“動く”。近年の女子ダブルスは、後衛が強いショットを打ち、前衛が隙をついて飛び出しボレーで決めるパターンに終始しがちだ。我慢強さと思い切りの勝負。身体能力と技術は違っても、やっていることはインターハイと同じだ。だがヒンギスは、パートナーのショットや相手の返球、陣形に応じてプレーを選ぶ。パートナーの良さを引き出しつつ、ひらめき重視のリスキーなプレーも交ぜる。だからプレーは流動的で、ペア間のプレーが連動する。
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photograph by Hiromasa Mano