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<日本一奪還へのタクト> 原辰徳 「“土壇場の一勝”を掴みとる」

2014/04/07
昨季、日本一へあと1勝と迫りながら苦杯を嘗めた。
積極補強でV本命と目される常勝チームの指揮官は、
新たに始まるシーズンにどんなビジョンを描くのか。

 重い敗北というものがある。

 昨年の日本シリーズ第7戦。第6戦で楽天の不敗エース、田中将大を打ち崩して逆王手をかけながら、巨人は最後の1勝をもぎ取ることができずに日本一連覇は夢と消えた。

 もちろん日本一を逃したこの敗北の重さはある。ただ……それ以上に、原辰徳の心にずしりと重くのしかかっていることがある。ここ一番の大勝負。そういう局面に持ち込みながら、勝ち切れなかった。そのチームの現実が、頭から離れないのだ。

「巨人の野球っていうのは、継承してきているものが一杯ある。80年の球団の歴史があり、
私が実際に知る中でも川上(哲治)さんから、ずっと受け継いできた強さというものがあった。それこそが伝統だと思うんです」

 ここ一番で必ず勝つのも、巨人の伝統の一つだったはずだ。

 過去にはV9最後の年となった1973年の最終戦での阪神との一騎打ち。また長嶋茂雄監督が率いた1994年には、中日とプロ野球史上初の最終戦同率首位決戦、いわゆる「10・8決戦」があった。

 そのいずれも、巨人は想像を超えるような集中力を発揮し、そして最後の勝ち名乗りをあげてきたのである。

「あの1敗ですべての勢いは止まったと思っています」

原辰徳 Tatsunori Hara
1958年7月22日、福岡県生まれ。東海大相模高、東海大を経て'81年、巨人入団。'83年に3割30本塁打100打点を達成するなど主軸として活躍し、'95年に引退。ヘッドコーチ等を経て'02年、巨人監督に。'03年に退くも'06年に復帰。チームを通算6度のリーグ優勝に導いた。

 だが、昨年のシリーズは田中を打ち砕き、そういう局面を作り出しながら、最後に敗れ去った。だから原は、この敗北を単に日本一を逃しただけではなく、巨人が「巨人である理由」を失う重い敗北につながる危険性があると考えるわけだ。

「最終的な結果を分析すると、打てなかった。短期決戦であれだけ打線が力を出せなかったということが大きな反省点でした。2012年は非常にいい勝ち方で日本一になった。昨年もその勢いでリーグを制したけど、あの1敗ですべての勢いは止まったと思っています」

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photograph by Hideki Sugiyama

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