フットボールの翻訳本を読んで、この歯ごたえ。『I AM ZLATAN』以来である。イブラヒモビッチの本が、あらゆる意味でサッカー選手の自叙伝像を壊してしまったのは、既読の方なら納得してくれる事実であろう。文学たらんとした文学より、よっぽどエネルギッシュな人間の描き方と流れるようなストーリーテリング。そして、その本の中では、最も酷い言われようだったペップ・グアルディオラなのだが、彼自身の半生記では、あの軋轢がどう書かれているのか?
というのが、最もわかりやすい本書への導線なのだろう。だが、その部分での魅力は氷山のほんの小さな一角に過ぎない。バルセロナから70kmほどにあるサントペドルの田舎から、ひょろっと痩せた煉瓦屋の息子がラ・マシアに入り、クライフ監督の黄金期を支える。そして、クラブの飽和と若手の台頭とともに、イタリア、メキシコへと渡り歩き、引退後に心のクラブに帰還。彼がバルセロナの監督に導かれるまでは、偶然と必然が美しく編み合わされた小説のようだ。
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photograph by Ryo Suzuki