#840
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<欧州蹴球紀行・赤い悪魔を訪ねて> ベルギー ~サッカーと僕たちの幸福な関係~

2013/11/11
「どうやら最近、ベルギー代表がかなり強いらしい」。
そんな噂が聞こえてくるものの、実態はよくわからないまま。
FIFAランク急浮上の理由を探しに訪れた地で見つけたのは、
サッカーをめぐって織りなされる、稀有でハッピーな光景だった。

「サッカーの記事を書き始めたのは1983年からです。その後約20年間、ベルギーにとってW杯に出場するのはごく当たり前のことでした。ところが2002年を境に、この国のサッカーは一気にダメになった。原因は世代交代の失敗、それに尽きると思います。この11年間、まあきつかったですよ。今日は何点取って勝つのだろう、ではなく、今日は何点取られて負けるのだろう、と考えながらスタジアムに向かっていたのですから。でもその分、今は代表チームにずいぶん楽しませてもらっています」

(ルディ・ヌイエンス ヘット・ラースト・ニュース紙記者 56歳)

ブリュッセルのミディ駅、外では冷たい雨が降っていた。

ブルージュの街並み。全体が屋根のない美術館と呼ばれるような美しい古都だが、ここもクラブ・ブルッへとサークル・ブルッへという2つの名門サッカークラブがある。 

 セルビア対日本戦の翌々日、ベオグラードからフランクフルトに飛び、空港駅から西へ向かう電車に乗った。ブリュッセルのミディ駅に着いたのは夜の11時前、外では冷たく細い雨が降っていた。

 アフリカ、アジア、様々な国からの移民の男たちがたむろする東口を抜け、ホテルまでの道を歩き始める。数百m行くと、北アフリカ系の怪しい男が英語で「ミスター、ミスター、あんた鳥のフンがついてるよ!」と後ろから声をかけて来た。彼らは旅行者(あるいはときに地元住人)の後ろから白い塗料を振りかけ(実際それは鳥のフンによく似ている)、相手が驚いて立ち止まると、親切にその汚れを拭くふりをして、ポケットの中の財布をすったり、もっと悪質な場合は、物陰からわらわらと男の仲間が出てきて、荷物をかっぱらわれることになる。

 ヨーロッパの国では、こういう事件が頻発し始めると、必ず右寄りの政党や政治家が『移民排斥』というスローガンを掲げ、それなりの支持を得る。もちろんベルギーでもその傾向は変わらない。

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photograph by Atsushi Kondo

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