競馬場や野球場の記者席で並んで取材したこともあるから「寺山さん」と呼ばせてもらう。本書は寺山さんが報知新聞に連載した馬券予想コラムのエッセンス。読み捨てが決まりの予想記事が本になるとは異例だが、競馬ファンはもちろん馬券を買わない人たちまでもが話題にした名物コラムだ。寺山さんには長文の競馬エッセイを集めた『馬敗れて草原あり』(新書館)などがあるけれど、こちらの短文の方が断然面白い。
予想記事はレース展開、出走馬の戦歴、騎手、馬場状態等のデータを入れて書くのが定型だから、記者が書こうが有名作家が書こうが似たようなものだ。それが寺山さんの手にかかると、ある時は別れた女と同じ誕生日の馬を勧め、ある時は馬名の語呂合わせ、ある時は騎手を論じ、ある時は干支占い……と、楽しい読み物になった。スシ屋の政、トルコの桃ちゃん、バーテンの万田の登場人物たちの競馬談義で予想馬券が決まる趣向と語り口の絶妙さ。
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photograph by Sports Graphic Number