JFL昇格組のチームを躍進させている元ストライカー。
'93年の代表メンバーの中で指揮官として独自の道を歩みながら
結果を残している2人が語る“あの日”の意味とは――。
広島県安芸高田市にある吉田サッカー公園は、広島市内に住む小中学生が気軽に行ける場所ではない。
たどりつくために必要な時間と距離は、ちょっとした旅と言っても差し支えがないほどである。
だが、もし可能なのであれば、サッカーを愛する多くの小中学生には、ぜひともこの“小旅行”の経験をお勧めしたい(なんだったら、大人も)。旅自体は人生のために何の役にも立たないこと請け合いだが、そこで行なわれているサンフレッチェ広島のトレーニングは、お金を払ってでも見る価値があるからである。
特別なメニューがあるわけではない。素晴らしく斬新だったり革命的だったり驚異的だったり、誰も見たこともやったこともないような練習が行なわれている……わけでもない。
見るべきは、細部にまでちりばめられた志にある。
相手FWが寄せても、広島のGKはつなぎのパスを選ぶ。
生年月日―― 1968.8.23
出身地――― 長崎県
代表歴――― 35試合1得点
サイドバックがボールを持った。相手FWが寄せてきたのでGKに戻す。通常、ほぼ100%のGKがクリアを選択する場面で、サンフレッチェのGKたちはつなぐことを選ぶ。ユース時代、自らFKを蹴っていたという、つまりはキックに絶対的な自信を持っている日本代表GK西川周作だけではなく、控えのGKたちも同じことをしていた。自陣深いところではリスクを冒すべきではないというサッカーのセオリーからすると、完全に道を外れたやり方である。
いわゆる“ドーハ組”の一人、「ポイチ」の愛称で親しまれた森保一監督は言う。
「これがバルサであれば、能力の高い選手が揃ってるんで、もっと前の方でポゼッションできるんだと思うんです。相手を押し込んだ状態でボールを動かしていくのは一番の理想なんですけど、ウチがボールを動かしながらスペースを作っていくためには、相手が来てくれないと困りますから」
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