#839
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<悲劇から20年、指揮官として> 森保一×高木琢也 「監督に必要なことは、オフトとドーハが教えてくれた」

2013/10/24
高木琢也(左)と森保一。
就任1年目にしてJ1優勝を経験した元ボランチと
JFL昇格組のチームを躍進させている元ストライカー。
'93年の代表メンバーの中で指揮官として独自の道を歩みながら
結果を残している2人が語る“あの日”の意味とは――。

 広島県安芸高田市にある吉田サッカー公園は、広島市内に住む小中学生が気軽に行ける場所ではない。

 たどりつくために必要な時間と距離は、ちょっとした旅と言っても差し支えがないほどである。

 だが、もし可能なのであれば、サッカーを愛する多くの小中学生には、ぜひともこの“小旅行”の経験をお勧めしたい(なんだったら、大人も)。旅自体は人生のために何の役にも立たないこと請け合いだが、そこで行なわれているサンフレッチェ広島のトレーニングは、お金を払ってでも見る価値があるからである。

 特別なメニューがあるわけではない。素晴らしく斬新だったり革命的だったり驚異的だったり、誰も見たこともやったこともないような練習が行なわれている……わけでもない。

 見るべきは、細部にまでちりばめられた志にある。

相手FWが寄せても、広島のGKはつなぎのパスを選ぶ。

森保一 Hajime Moriyasu 17 MF
生年月日―― 1968.8.23
出身地――― 長崎県
代表歴――― 35試合1得点

 サイドバックがボールを持った。相手FWが寄せてきたのでGKに戻す。通常、ほぼ100%のGKがクリアを選択する場面で、サンフレッチェのGKたちはつなぐことを選ぶ。ユース時代、自らFKを蹴っていたという、つまりはキックに絶対的な自信を持っている日本代表GK西川周作だけではなく、控えのGKたちも同じことをしていた。自陣深いところではリスクを冒すべきではないというサッカーのセオリーからすると、完全に道を外れたやり方である。

 いわゆる“ドーハ組”の一人、「ポイチ」の愛称で親しまれた森保一監督は言う。

「これがバルサであれば、能力の高い選手が揃ってるんで、もっと前の方でポゼッションできるんだと思うんです。相手を押し込んだ状態でボールを動かしていくのは一番の理想なんですけど、ウチがボールを動かしながらスペースを作っていくためには、相手が来てくれないと困りますから」

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photograph by Takuya Sugiyama

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