本田圭佑は、気が付けば“替えの利かない選手”になっていた。
モスクワの地で、国籍と言葉の壁を超えてリスペクトされる
男の素顔が指揮官とチームメイトの証言により、浮かび上がる。
本来であれば、本田圭佑はもっとロシア語を勉強すべきだったのかもしれない。
スルツキ監督は残念そうに言った。
「ホンダはロシア語を少し話せる。けれど、期待しているほどには良くならなかった」
ロシア語を話せる本田だが監督としては「まだまだ物足りない」。
CSKAの練習中、本田は「ダーバイ!」(さあ行くぞ)といったロシア語をよく口にするし、約2年前、モスクワのカフェで取材したときには、ロシア語で淀みなくエスプレッソと水のセットを注文してくれた。一般的な日本人に比べたら、かなり話せる方である。ただ監督からすると「まだまだ物足りない」ということなのだ。
ロシア代表MFのザゴエフも、監督と同じように感じていた。
「ホンダとは英語で話すんだけど、こちらの英語力に限界がある。どうしてもロシア語のグループと、英語のグループで分かれてしまうんだ。ホンダはサインを頼んだら絶対にしてくれるし、すごくやさしい。でも、言葉が通じないと、黙っている時間が長くなるよね」
本田から「パパ」というあだ名で親しまれている37歳のラヒミッチも、「あまり会話はないんだよなぁ」と惜しんでいた。
だが、あくまでそれは“ロシア語グループ”からの印象である。
英語で話す選手は「ホンダはよく声をかけてくれる」と慕っていた。
“英語グループ”の選手に聞くと、日本代表にいるときとほぼ変わらない、生き生きとした本田の姿が浮かび上がってくる。
ナイジェリア代表FWのムサにとって、本田は師匠のような存在だ。
「ピッチの中でも外でも、ホンダはよく声をかけてくれるんだ。オランダのフェンロでプレーしていたという共通点もあるからだと思う。特にプレー面のアドバイスをくれるのが嬉しい。シュートの打ち方とか、パスを引き出すための動きを教えてくれる。そういう動きをすると、彼から本当に正確なパスが来るからね。試合中も落ち着かせてくれるし、すごく成長に役立っている」
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