陸上競技においては、最近、オリンピックで世界記録が出ることはほとんどない。出るとすれば女子の3000m障害や棒高跳びといった歴史の浅い種目だ。北京五輪におけるウサイン・ボルトのように、男子100m、200mといった伝統種目で世界記録を出したのは例外に属する。これは記録のレベルが高くなったこともあるが、オリンピックでは、何より勝つことが優先され、中長距離や跳躍種目で、あえて記録を狙う選手が少ないことも理由の一つだ。
しかしロンドン五輪では、世界記録を出して金メダルを獲る可能性の高い選手がいる。10種競技の米国代表、アシュトン・イートンだ。'11年世界選手権で銀メダルだった24歳。今年6月の全米選手権・ロンドン五輪代表選考会で、ロマン・シェブルレ(チェコ)が保持していた世界記録を11年ぶりに更新した。記録は9039点。これがどれくらいすごい記録なのか。その内容を理解するとともに、ロンドンでさらに塗りかえる可能性が高いという点について、じっくりと見ていきたい。
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photograph by Sports Illustrated/Getty Images