サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER
まず30km走ってから飲み会って……。
砂漠ランナー新年会のべら棒な面々。
text by
松山貴史Takashi Matsuyama
photograph byMiki Fukano
posted2011/02/18 06:00
お台場海浜公園を異様な集団が走り抜ける……わずかな時間だったとはいえ、砂浜で走れたことは大きな収穫に。通常のマラソンとはまったく別次元のランニング体験!
走りながらの会話が完全にブッ飛んでるランニング集団。
みなさんタフで、30km走っても息一つ切れず余裕綽々で、中には途中立ち寄ったお台場の海で、「アタカマの練習だ」といって東京湾に飛び込む余裕がある人もいた。
ランニング中の会話もややおかしくて、
・自衛隊員のストイックさについて
・日本初の100マイルトレイルランニングレース(48時間で富士山麓を160km走るらしい)
・家賃が高いから都内の駐車場でテントを張って暮らすのはどうか
・大会に出るための休暇が取れないから会社辞めようかな
・会社の机の中にはいつも辞表を入れている!
・奥さんに内緒で砂漠レースに参加したら離婚を宣告された
などなど、正直笑えない話も多々あった。
日本マラソン界の魔窟となった砂漠ランナー飲み会。
30kmを走り終え、いよいよ飲み会である。
夜の部参加者は21名。世界の名だたる変態……いやエクストリーム・レースに出場するメンバーが一堂に会しており、話は自然とディープな方向に流れていく。自己紹介もいちいち凄くて、
「24時間マラソン世界チャンピオンです」
「今年南極マラソン完走しました」×2人
「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン出ました」
「次はグリーンランドをカヤックで横断します」
「○○大使館勤務です」
などなど、大会名は失念したが、そんなレースが地球上にあったのか……というようなレース出場者ばかりだった。 ルーキーの小生は話を聞くたびに戦慄していた。
自分は最近少し道を踏み外したかも……と思っていたが、この方々に比べればサハラマラソン出場などまったくもって「普通」のことだった。周囲を見渡すとS級クラス以上の猛者ばかり。最早この会場は日本マラソン界の魔窟となっていたのだ。
昨年南極マラソンを走破した赤坂剛史さん、藤岡豊さんが来ていた。南極マラソンのTV番組(NHK)を見せていただいたが、凄まじかった。ランナーの横をペンギンやアザラシが泳いでいる。道ではなく、雪の中を進んでいるよ。しかし、とても羨ましい。この映像を見て南極にチャレンジしたいと思わない人は「漢(おとこ)」じゃないはず。この会場に集まったほとんどの方が、エクストリームの極北としての「南極」を目指していると聞くと、そんな気にもなってくる。まぁ自分はたぶん目指すことはないですが……、たぶん。
24時間マラソンの世界大会で優勝した井上真悟さんとも話すことができた。
なんでも、昨日青森から走って東京に帰って来たらしい。最近、新幹線が開通した青森からである。さすが世界チャンプは違う。
井上さん曰く、普通のマラソンではオリンピックに出られないことを悟り、「こっちの世界」に転じたらしい。
それにしても24時間マラソンの世界チャンピオンとは凄い。競技人口がどれだけいるのかは敢えて聞かなかったが、世界一には変わりない。1000km以上のランニング挑戦を通じて全国各地の子供たちへ可能性を伝えてゆく講演活動を行っているらしく、最近は「24時間走世界チャンピオンから逃げ切れるか? 巨大鬼ごっこ」というものを企画しているらしい。こちらは是非参加したいが、鬼が世界チャンプなので見つかったら終りである。
ずっと気になっていた事だが、砂漠ランナーは普段何をしているのか?
レースに出るには最低2週間は休暇を取らないといけない。