博多の人・王貞治BACK NUMBER
「僕を4番から外してください」ホークス小久保裕紀“選手人生最大の危機”に王貞治は何と答えたか…「あれで逃げていたら、次も逃げていた」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2026/08/07 06:00
1999年、初優勝に向けて突き進む王ダイエーでひとり大不振に陥っていた小久保裕紀に王がかけた言葉とは?
「チームの勝敗の責任は、俺が背負っているんだ。お前は、そんなことを考えずに、自分の状態を少しでも上げることだけを考えろ」
そう言うと、王は小久保を4番から外すこともなければ、2軍での調整を命じることもなく、変わらず、4番の欄には「小久保」と書き続けた。
なぜ小久保を外さなかったのか?
「あー、来た、来た、来た」
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王は、小久保が思いつめた表情で監督室にやって来た時の光景を脳裏に蘇らせたのか、温和な笑みを浮かべてうなずいた。
なぜ、外さなかったのか。その真意を、王に聞いた。
「小久保1人だけじゃなく、もう1人、動かさなきゃいかんでしょ。それが『4番』となると大変なんだ。プレッシャーを感じる人が出てくるわけだから。例えば、4番にした人が今、成績がよかろうが何だろうが、今以上にやりにくくしちゃう。そうすると、2人やりにくいのが出てくるわけだ。
小久保だって、4番を外したからってそんなに気楽になるもんじゃないよね。またバッターボックスに立って、ピッチャーと勝負しなきゃいかんのだから。チームに、大変なのを2人抱えちゃったら、よけい大変じゃない? だから『大変なのはお前だけでいいよ』と。でも、小久保は自分自身でそういう風に言ってくるくらいだから、しんどかったんだろうね」
つまり、指揮官・王貞治としては、4番・小久保を動かすことで、首位争いを繰り広げている好調なチームの骨格を、動かしたくなかったのだ。小久保を4番から外すと、別の選手が4番に座る。その空いた打順のところに、小久保か、あるいはまた別の選手が入る。しかし、うまくいっているものを、あえて動かす必要はない。逆に考えれば、不振の4番がいながらでも、チームは勝っているのだ。
王自身の経験があったから?
巨人での現役時代、小久保のような思いを経験したからだろう。そう推察して、王に「会長自身の体験ですか?」と尋ねてみると、答えは意外なものだった。

