炎の一筆入魂BACK NUMBER
骨が見えるほどの大ケガ後も「気合と根性」で迷わず盗塁…育成4年目で遂に支配下登録を掴んだカープの苦労人・名原典彦がチームに与える活力
posted2026/06/08 11:00
気合を前面に押し出してプレーする名原
text by

前原淳Jun Maehara
photograph by
SANKEI SHIMBUN
カープはいま、パ・リーグ相手に力のなさを痛感させられている。3カード連続勝ち越しで臨んだ交流戦で6連敗スタートし、暗いトンネルの出口はまだ見えない。そんな中、一筋の希望の光となっている存在が、支配下登録されたばかりの名原典彦だ。まぶしいスポットライトを浴びてきたスター候補生ではなく、育成4年目の崖っぷちから這い上がってきた苦労人だ。
2022年の育成ドラフト1位で青森大から入団。4年目の今季は球団から与えられた猶予期間の最終年であり、まさにラストチャンスだった。
二軍で突出した数字を残したわけではない。一軍で大盛穂や辰見鴻之介らがスタメン起用された、代走や守備固めとして起用できる選手が必要となっていたチーム事情が追い風となった。
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「戦力として一軍で戦っていくピースとして必要なので、(支配下登録を)球団にお願いした。走力、守備力は魅力だと思うし、何よりハングリー精神を持っている」
新井貴浩監督は、そう期待を口にした。ようやく巡ってきたチャンス。これまで漠然と感じていた生き残るための名原の覚悟は、指揮官の言葉によって輪郭がはっきりした。
「一軍に来てから監督に『お前はもう気合と根性だ』と声をかけていただいたんです。二軍のときから打撃は形じゃないと分かっていたんですが、それまで曖昧に思っていたものが明確になった。綺麗にやろうとしても結果は出ない。泥臭く、必死に『気合と根性』でやっていかないといけない。今もらっている出番を一度手離したら、もう自分には回ってこないと思う」
入団してから危機感しかなかった。足と守備で活路を見いだそうとしながらも、課題の打撃では苦しんだ。毎オフ、筋力強化を重ねて体は大きくはなったものの、まだ一軍選手の中では見劣りする。打撃練習では他の選手の飛距離や打球音と比べれば物足りない。パワーや技術で勝負できるタイプではないことを、自身が最も理解していた。だからこそ、精神力では誰にも負けてはいけないと腹をくくった。
3年目の大怪我
育成選手として節目となるシーズンだった昨季の大けがが、名原をさらに強くした。4月11日ウエスタン・リーグ中日戦の9回。代走で出場して二盗を決めた。ただ、深い角度で滑り込んだことで左膝を強打した。攻撃終了後に念のため処置をしてもらおうと走って向かったトレーナー室で、トレーナーの青ざめた表情を見て異変に気づいた。傷口は4センチほどに広がり、骨の一部が見えていた。それだけの傷で出血が少なかったのは、土が入り込んで止血されていたからだった。
タクシーや病院の手配にばたつくトレーナーの横で、名原は延長10回の守備に就こうとしていたという。溢れるアドレナリンによって痛みを感じられなかったという。無論、交代となって病院へ直行。病院に着く頃には激痛が襲い、歩くこともできなかった。全身麻酔で患部を洗浄した後に縫合され、復帰には2カ月を要した。

