濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「僕はそれが一番嫌だった」武尊がかつて明かしていた“ある思い”…引退会見で「裏方でもなんでもやる」まっすぐな格闘家が貫いた“格闘技への愛”
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao ONE Championship
posted2026/05/16 11:05
4月26日、引退試合でロッタンに勝利した武尊
試合の日も、その次の日も眠れなかったと武尊。ロッタンと打ち合う緊張感、負ける恐怖が消えなかった。ウトウトしかけると飛び起きて、自分が勝ったことを再確認したという。
眠れない中で、SNSでのファイターからの祝福ポストなどに丁寧に返信してもいた。エゴサーチをしていたかどうかは分からないが、きっと新人の頃のように心からSNSを楽しむことができていたのだと思う。
引退会見で武尊が強調した言葉
どれだけでも自画自賛していいロッタン戦の勝利。けれど何度も言葉を重ねたのは、格闘技業界全体のことだった。
ADVERTISEMENT
「僕が引退しても、この格闘技の熱は絶対これからのファイターたちにも力になるので。ONEだけじゃなくK-1、RISE、KNOCK OUT、団体はいっぱいありますけど、どの団体が凄いとかじゃないんですよ。格闘技が凄いんです。みんなで格闘技、盛り上げましょう!」
試合2日後の引退会見では、新興キックボクシングイベント『GOAT』運営会社の取締役に就任することも発表された。そこでも武尊は「どの団体にしか協力しないとか、そういうことではないです」と強調している。団体の壁だとか政治だとか、そういったものに選手が悩まされることがあってはいけない。そんな意思をどこまでも貫いた。
苦しんで苦しんで、時に笑顔も奪われて、なお武尊は少年時代に夢見た自分であり続けた。引退会見で苦しかった時期について質問すると「辛いことがあったからこそ、勝った喜びもこれだけ大きい。苦しかった日々も愛おしいです」。
涙した武尊にもう一つ、聞きたいことがあった。現役生活、最後に報われましたか?
「本当に報われすぎなんじゃないかと思うくらいです。今日までやってきてよかった」
本当によかった。その言葉が聞きたかった。ロッタン戦の勝利だけでなく、そのキャリア、リング内外での奮闘のすべてに「おめでとう」と言いたい。

