甲子園の風BACK NUMBER
「名門女子校→共学」直後に…野球部に29人も入部、岩手の私立校に“あの有名監督”がやってきた…名門「白百合」になぜ野球部できた? 現地で取材
text by

柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byYuji Yanagawa
posted2026/04/26 11:01
今春、名門「白百合」系列の中高で初めて共学化に踏み切った盛岡白百合学園(岩手)
それでもこの日来場したメンバーの中には今春の甲子園に出場した選手も含まれていた。1回表、守る盛岡白百合にとって最初の打者として迎えたのは、戸倉光輝だ。中学時代にU−15侍ジャパンに選出された経験を持ち、センバツでは新2年生ながら正二塁手としてスタメン出場した野球エリートといえる球児である。
県内の高校野球をリードする学校に挑むのは15歳という中学を卒業したばかりの1期生だ。國保は言う。
「高校野球の最高峰である甲子園。その空気を知る選手たちがどんなプレーをするのか。うちの選手たちもこれまでの練習試合とは違うプレーを目の当たりにすると思うんです。テレビで観た、あるいはスタンドから見たレベルの高い野球を肌で感じながら、試合ではもがいてもがいて、何かを掴んで欲しい。ただ強豪との試合を経験するだけでは何も残りませんから」
甲子園出場選手から三振奪った…
ADVERTISEMENT
盛岡白百合のエースである村上大雅は、花巻東の戸倉から空振りの三振を奪う。この日観戦に訪れていた白百合関係者のなかに戸倉のプロフィールを知る者はほとんどいないはずで、村上が起こした小さな奇跡に気付いた者はまずいないだろう。村上は言う。
「そんなにすごい選手だったんですか? 知らなかったです(笑)。花巻東って、強いじゃないですか? だから勉強のつもりで、緊張しないで投げられたらいいな、みたいな感じで投げただけでした。球速はMAX120キロぐらいです。ナチュラルにシュートするストレートが自分の持ち味なのかなと思っています」
初回を「0」に抑えた盛岡白百合だが、その後は守りのミスが相次ぎ、5人の投手陣が失点を重ねて大敗した(学校側の要望により得失点は公表せず)。
なぜ共学に? なぜ野球部を?
バックネット裏から村上の粘投を見守っていたのは、校長の浅沼千明だ。入学間もない男子生徒たちの奮闘を眺めながら、「素晴らしい船出になった」と浅沼は感慨にふけった。
140年以上の歴史があり、高校だけでも全国に5校ある系列校のなかで、共学化に踏み切ったのは盛岡白百合が初だ。近年は定員(240人)に対して入学者が半数にも満たず、2024年度が86人、2025年度が92人にとどまった。生徒募集に苦戦していた同校の校長として、浅沼はなぜ共学化に踏みきり、なぜ野球部を創部したのか。

