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「後悔はない」現役引退しコーチに…村澤明伸の苦難の陸上人生“故障が続いた理由”“大迫傑への思い”それでも「自分が悲劇的な選手とは思わない」 

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加藤康博

加藤康博Yasuhiro Kato

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photograph byShiro Miyake

posted2026/04/14 11:01

「後悔はない」現役引退しコーチに…村澤明伸の苦難の陸上人生“故障が続いた理由”“大迫傑への思い”それでも「自分が悲劇的な選手とは思わない」<Number Web> photograph by Shiro Miyake

現役を引退し4月からSGホールディングスのコーチを務める村澤明伸。大迫傑への思いや、コーチとして目指す夢までを語った

 現役生活に後悔はないと村澤はいう。だが高校時代から世代トップをひた走り、学生時代から日本選手権の上位常連となっていた村澤だけに、オリンピックや世界選手権の代表として、そしてマラソンのトップランナーとして活躍する姿が期待されていたことも事実だ。そう、それは高校の1学年下の後輩で誕生日も2カ月しか違わない大迫傑(リーニン)のように。

移り変わってきた、大迫傑への思い

「もちろん私自身も世界大会に出たいと思っていました。ただ、今となっては特に思うところはなく、これが私の陸上競技人生だったということです。大迫は先日の東京マラソンも2時間5分台で走っていて、純粋にすごいですよね。彼への思いは置かれている環境で変わってきました。高校時代は勢いのある後輩でしたし、大学からはライバル。そして卒業後、彼が渡米し、マラソンに参戦するようになってからは尊敬の対象になりました。

 私のたどり着けなかったところに彼がたどり着いているわけですから、今もその思いは変わりません。ストイックさと積み上げてきた努力、そしてしっかりリラックスすべきところはリラックスするという競技者として必要なコントロールが彼はできていて、私はそれができなかったということではないでしょうか」

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 ややもすれば、故障に苦しんだ悲劇的な選手という見方もされるかもしれないが、本人は「自分の競技人生をそのように悲観的には見ていません」と言下に否定する。

 苦しさはあったが、それでも走るということに向き合い、自分自身と向き合いつづけた。2021年当時、自身の症状を「機能不全」と語り、多くのランナーを苦しめてきた「動作特異性局所ジストニア」、通称「ぬけぬけ病」と認めることはなかった。それは当時、「完治している例が少なく、自分の症状をそのように決めてしまうと、自分も治らないと考えてしまうから」だったが、近年はその事実も認め、そのうえで自分の走りを再構築することを目指した。自身の身に起きたいいことも悪いことも、すべてを受け入れる覚悟を決めたのである。そしてそのすべてを自分の中で消化したからこそ、引退を決めた今、「これが私の競技人生だった」と本心から言えるようになったのだ。

【次ページ】 これからは選手とともに

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