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「後悔はない」現役引退しコーチに…村澤明伸の苦難の陸上人生“故障が続いた理由”“大迫傑への思い”それでも「自分が悲劇的な選手とは思わない」 

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加藤康博

加藤康博Yasuhiro Kato

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photograph byShiro Miyake

posted2026/04/14 11:01

「後悔はない」現役引退しコーチに…村澤明伸の苦難の陸上人生“故障が続いた理由”“大迫傑への思い”それでも「自分が悲劇的な選手とは思わない」<Number Web> photograph by Shiro Miyake

現役を引退し4月からSGホールディングスのコーチを務める村澤明伸。大迫傑への思いや、コーチとして目指す夢までを語った

勝たなければいけない、と

「いつからかははっきりと覚えていませんが、自分の中で“勝たなければいけない”が強くなった瞬間がたしかにありました。それは“勝ちたい”とはまったく異なるもので、そうした状態になってしまうと本当にストレスなので、実際に勝つのは難しいと思います。また別の軸ではありますが、大学の後半くらいから勝つことへの欲が強くなりすぎていたことにも気がつきました。その欲が体の限界を超える練習へと追い込み、故障してしまうことが何度もあったのです。一番の分岐点は2017年の北海道マラソンで優勝し、翌年2月の東京マラソンを走った後くらいですね。この時期は体の状態を無視するトレーニングをしていたと思います」

 だからこそ、体をリセットした2021年以降は「もう一度、気持ちよく走れるようになる」ことを目指した。自分の心と体をしっかりコントロールできて初めて、勝負の世界に戻れる。村澤は現役時代、事あるごとに「走りのバランス」という言葉で自身の状態を語っていたが、同時に「心身のバランス」も重要であることに気がついた。それを取り戻すことも、村澤の現役生活第2章のテーマだった。

 しかし残念ながら、それは成し遂げられなかった。

後悔はないけれど

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「自分の体のコントロールもできないのに、勝負がコントロールできるはずもありません。ただ自分で納得のいくまでやって現役を辞めることができたのは良かったと思います。もし途中で不貞腐れて辞めていたら、こうして指導者として声をかけていただくこともなかったでしょう。引退するにあたり、“あの時、あれをしておけば”とか、“あれをしなければよかった”という思いはありません。その時点で自分が最善と判断したことをしてきましたので。ただ、これから指導をする上で、選手を自分のような状態には絶対にしてはいけないと思っています」

 静かな語り口に終始した村澤だが、「絶対に」の部分だけは力を込めて強調した。

【次ページ】 移り変わってきた、大迫傑への思い

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