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「第3打席こそ大勝負だった」なぜ韓国リーグ出身左腕は大谷翔平から三振を奪えたのか? WBC優勝ベネズエラ“無名ブルペン”の秘密「あの三振が流れを変えた」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byDaisuke Sugiura
posted2026/03/21 06:00
大谷翔平を空振り三振に仕留めるなど、WBC優勝に大きく貢献したエンマヌエル・デヘスス(左)。ケガで辞退しながらもチームに同行したエース、パブロ・ロペス(右)
小刻みに投手を使ったロペス監督の巧みな起用法、ペレス捕手の円熟したリードで、日本打線に照準を絞らせなかったことが流れを変える要因になった。それと同時に、侍ジャパンの中でも“別格”の存在である一人の怪物を食い止めたことも大きかったのだろう。第1打席に先頭打者弾、第2打席は四球で歩かせた大谷翔平こそが日本に勢いを与える存在であり、どこかでその活躍を寸断する必要があった。
ベネズエラ投手陣が波に乗る分岐点になった瞬間を問うと、聡明なロペスは大谷の第3打席をあげた。5-2とリードした日本が4回1死一、二塁のチャンスを作った場面である。ここで左腕デヘススが大谷を三振に斬ってとった投球は値千金であり、文字通り、このゲーム最大のターニングポイントだった。
「700フィート飛ばしたような初回のホームランのあと、私たちは大谷をある程度抑え込めた。第2打席は四球で歩かせたが、重要なのは勝負するタイミングを見極めることだった。第3打席こそが大勝負であり、とにかく良い球を投げるしかなかった。“史上最高の野球選手の一人”に対して、デヘススは主導権を握り、テンポをコントロールしたことが決め手になった。彼のやったことは本当に誇らしいよ」
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デヘススとペレスのバッテリーはこの打席中、同じ球種、コースの球を1球も続けなかった。高めの2シームを空振り、外低めのカッターを空振りでカウント0-2としたあと、外高めの4シームがボール、内角高めの2シームがファウル。そして、最後は外低めにカッターを投げ込むと、大谷のバットは空を切った。
ロペスの言葉通り、早めに追い込んで勝負の主導権を握ったデヘススは、機能しているように見えた球種であっても連投は避け、別の球で勝負にいく機転と度胸を持っていた。韓国球界出身の左腕が見事に大谷を空転させたこの打席。勝負の行方を左右する歯車がゴトリと音を立てて動き始め、準々決勝の流れが変わった瞬間でもあった。
語り継がれる逆転劇
「ベテランと若手、その両方が組み合わされたいいチームだった。ベテランはチームを引き締め、モチベーションを維持し、集中させてくれる存在。一方で若手はアグレッシブで、恐れず、執拗にプレーしてくれた。チーム全体で非常に良いゲームプランを組み立てて、それを若い選手たちがしっかり体現してくれた結果だと思う」
ロペスが誇らしげにそう語った通り、ペレス、ロペスといった知恵袋的な存在に支えられ、まだ20代のデヘスス、セルパ、パレンシアらも存分に力が出せたのだろう。日本、アメリカという優勝経験のあるチームを撃破しての優勝は、チーム内に良好なケミストリーが生まれていたからこそ。中でも首脳陣、選手たちが死力を尽くして成し遂げた日本戦の逆転劇は語り継がれていく。特に大谷をも空転させた中盤イニングの息詰まる攻防は、2026年のベネズエラの命運を左右した分岐点として、大会のハイライトとして、これからも記憶されていくに違いあるまい。


